恋のるつぼ

文戸玲

ねがいのかたち

「ねぇ、あの子って誰かな?」


 中学2年生の沙耶香は、友達と一緒に、学校の校庭で遊んでいた。

 そこに、1年生の男の子が現れた。白いシャツに紺色のセーター、制服のスラックスをはいた彼は、少し影になっていたが、何か独特の雰囲気があった。


 友達たちは、まだ中学生だからか、変な騒ぎを起こしたが、沙耶香は黙ってその男の子を見つめていた。

 そして、その瞬間、何かが彼女の中で動き出した。


 彼女は、何とも言えない想いを持っていた。

 どうしてか、彼女はあの男の子にひかれていたのだ。


 数日後、沙耶香は、彼の名前が「大樹」だと知った。

 彼は、クラスの中でも目立たない存在だった。

 しかし、沙耶香にとっては、彼は特別な存在だった。


ある日の放課後、沙耶香は、大樹に声をかけられた。

 彼は、校庭でサッカーをしていた彼女たちに、ボールを返していたのだ。

 沙耶香は、彼が自分たちを見つけてくれたことに、なんだか胸がいっぱいになった。


「あの、沙耶香さん、いいですか?」


 大樹の声に、彼女はびっくりしたが、嬉しくもあった。


 「は、はい。どうかしましたか?」


 「えっと、これ、受け取ってください。」


 大樹は、小さな封筒を差し出した。


 「これは何ですか?」

 「ねがいをかたちにしたものです。開けてください。」


 封筒を開けると、そこには、小さな折り紙が入っていた。それは、シンプルなハートの形だった。


 「これは、どういう意味ですか?」


 沙耶香は、戸惑いながらも、大樹に尋ねた。


 「僕の、沙耶香さんに対する気持ちです。」


 大樹は、恥ずかしそうに微笑んだ。

 沙耶香は、その瞬間、自分の気持ちに気づいた。自分も、大樹に惹かれていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る