おまけ ハッピーウエディング!

 南海岸は雲一つ青空で、今日の日を祝うようだった──。

 真っ白のタキシードに身を包んだレオンハルトは、そんな空を眺めていた。


「レオンハルト様、お時間です」

「ああ、今行く」


 彼の愛しい人の準備が整ったようで、そのことをテレーゼが伝えにきた。


 シルバーの髪が太陽の光によく映える。

 そんな彼がサファイアブルーの瞳で見つめたのは、愛しい、愛しい……。


「コルネリア」


 レオンハルトの言葉を聞いて、彼女は振り返った。

 その瞬間、彼は時が止まったような気がした──。


 愛しい彼女は、ピンクの長い髪を綺麗に束ねて、アメジストのような瞳で彼を見つめている。

 ぷくっとした可愛い唇には、いつもより鮮やかなルージュが塗られていた。

 そんな彼女は、真っ白なウエディングドレスに身を包んでいる。


「レオンハルト様」

「コルネリア……」


 真っ白な生地に刺繍が細やかに施されており、レースもひらっとしている。

 そんな彼女を見て、彼は立ち尽くしていた。


「レオンハルト様……?」


 やっぱり自分にこんな綺麗なドレスは合わなかっただろうか。

 そう不安に思いながら、コルネリアはレオンハルトのもとに歩み寄る。


 すると、そんな彼女をドレスが崩れないように気を遣いながら、ふわっと彼は抱きしめた。


「え……?」

「可愛すぎる、いや。今日は『綺麗だね』というべきだね」


 そう囁きながらぎゅっと抱きしめて、彼は吐息交じりにさらに囁く。


「こんな綺麗な僕の奥さん、みんなに見せたくない」

「わがままはダメです。リュディーさんもクリスティーナ様も待って……」


 駄々をこねる夫を叱る彼女の唇に、レオンハルトの唇が重なった。


「レオンハルト様っ!!」

「結婚式の日に、他の男の名前を呼ぶなんて許せない」


 そう言ってもう一度唇が重なった。

 そんな彼女からきっとまたお叱りが降ってくるかと思ったが、意外な言葉が帰ってくる。


「私の心はもうレオンハルト様に捕まってしまっています。あなたに救われて、それからあなたに捕まっちゃいました」


 首を少し傾けてほんのり頬を染めながら笑った彼女に、レオンハルトは虚をつかれた。


「コルネリア」

「はい!」

「今すぐいちゃいちゃしたい」

「それはやめてください」


 そんな会話が繰り広げられた後、会場である庭園から大きな声が聞こえてくる。


「レオンハルトー!! あんたいつまでコルネリアを独り占めしてるの!?」

「おい、クリスティーナ。叫ぶのはやめろ」


 そんな王女様と彼女の未来の婿から声が聞こえてくる。


 二人の声を聞いて、コルネリアとレオンハルトはくすりと笑い合って見つめあう。


「コルネリア、これからも一緒にいてほしい」

「はい、あなたに愛を誓います。ずっと……」


 こつんとおでこを合わせて微笑みあった二人は、未来に一歩踏み出した──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【電子書籍化】聖女の力を失った私は用無しですか?~呪われた公爵様に嫁ぎましたが、彼は私を溺愛しているそうです~ 八重 @yae_sakurairo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ