不器用な二人の恋物語 おまけ

 リュディーが国婿として迎え入れられたしばらく後、クリスティーナはじーっとそんな彼を見つめていた。


「そんなに見るな」

「え~だってリュディーにコーヒー淹れてもらうの好きなんだもん」


 腕まくりをしてエプロンをしながら、部屋に作られた簡易キッチンでコーヒーを淹れている。

 ゆっくり、じっくりと蒸らして美味しい雫をカップに移していく。

 クリスティーナが自分もコルネリアたちのように、彼にコーヒーを淹れてもらいたいと公務で忙しい合間でもコーヒータイムを楽しめるように、王宮の一室にカウンターをキッチンを作ってしまった。


「ふふ」

「なんだ」

「ん? かっこいいなって」

「褒めても何もでないぞ」


 ぶっきらぼうに言いながらも内心は妻の誉め言葉を嬉しく感じている。

 表には出さないが、照れ屋な彼に響いていることは彼女にもわかった。


 コルネリアが段々ブラックコーヒー寄りのものを飲めるようになってきたのに対して、クリスティーナはいつまでもミルク多め、はちみつ多めのカフェオレだった。

 もはやコーヒー風味のミルクではないか、とリュディーは思うのだが、彼女からの鉄拳が怖いので口にしない。


「ほら、できたぞ」

「わあっ! 可愛い!! なにこれ!!」

「ラテアートだ」

「らてあーと?」

「こういうコーヒーの泡にチョコで絵をかく。そういう芸術だ」


 クリスティーナはカップをそっと持ち上げて、描かれたアートをまじまじと見つめる。


「ねえ、なんでくまさんなの?」

「ん? ……可愛いから」


 何を描こうかと思ったが、先程まで一緒にいた強面の熊のようなガタイのいい国王がちらついて思わず描いてしまったと言いづらかった……。

 可愛い、可愛いと連呼しいながらも、名残惜しそうにカップに口を付ける。


「美味しいっ!!」

「だいぶ甘くした、どうだ?」

「う~ん。なんか、ふんわりはちみつじゃないのがあるような」

「よくわかったな。桃だ」

「もも?」


 この時期には王都近くの畑では桃がよくとれる。

 献上品として先日届けられたものをジャムにして使用したのだという。


「これも好き!」

「ああ、夏限定だ」

「ふふ、コルネリアにも飲ませてあげたいっ!!」

「ダメだ」

「え?」


 リュディーはそう言いながらクリスティーナの顎をくいっと上げて、吐息がかかるほどの距離で囁いた。


「それはクリスティーナ専用だ。他のやつにはあげない」

「──っ!!」


 彼はちゅっと呆けている彼女の唇を奪うと、「ごちそうさま」という。

 もうバカバカっ!!というクリスティーナの声が部屋に響いた。



 今日も王宮は平和だった──



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おまけストーリーを本日「小説家になろう」に追加しました!

よかったらご覧ください!

またベリーズカフェ様にてファンタジーランキング総合1位となりました!

ありがとうございます!!!

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