百合カップルとペット(親友)の話
畳アンダーレ
第1話
「あ~……部屋、見つかんないね……」
「そうだね……」
あたし、三森玲香はカフェのテーブルに突っ伏していた
頼んだカフェオレは床に落とさないようにちゃんと両手で握ってる
「玲香、やっぱりこんなの無謀だったんじゃないかな……」
肩をすくめながら私に語りかけるこの子は柚季。私の幼馴染なの
優しくてこの子に励まされたら誰だって頑張れる。そんな子だ
「いやっでも私は諦めないよ柚季! 絶対に部屋を見つけてやるんだから!」
「でもさっきの不動産屋さんで5件目だよ? ねぇ玲香、これだけ探して見つからないんだから……」
「でも折角あの時に決めたことを曲げたくないの! 柚季だってそうでしょ?」
「それはそうだけど……」
ぐわっと頭を上げて柚季を見つめる。困った顔であたしを見つめてくるこの子と私はとある決断をしたんだ
あたしと柚季は偶然にも同時に仕事をクビになったんだ。それもとっても理不尽な理由で。
その日は2人でお酒を呑んで愚痴を吐き合って、そして半ば勢いで2人で一緒に生活することに決めたんだ
大変な時に一緒にいられる人って大事じゃん?
「2人で語り合ったあの日の決断を忘れたの?」
「そんなことないよぉ。でも、こう部屋が見つからないんじゃ一緒に暮らせないよ……」
「だからってまだ諦めるのは早いよ! 少し休んだら隣の町の不動産屋に行くからね!」
あたしは握りしめたカフェオレに刺さったストローを咥えてズゾゾーっと雑に吸い上げる
そんなあたしを見てうつむいて少し髪を弄る柚季
絶対に部屋を見つけてやるんだから!
「あーっ!やっぱり玲香と柚季だ!」
「んむぅー?」
「え……?」
気が付けばあたしたちのテーブルの側に1人の女の子が立っていた
驚いた顔で私と柚季を両手の指で指差している
この子って確か……! あっやばっカフェオレがぁっっ!?
「ぶぼぉっ!! ゲホッゲホッゲホッ!」
「あーっ! ねぇちょっと汚いよ玲香ぁ!」
「ごめっっ! ケホッ……ケホッ」
「あーもういきなりひどいよーおしぼり借りるからね?」
「美海……? 美海なの?」
「そうそう……久しぶりだね!」
あたしは自分の中に生まれた反乱分子を沈めた後、女の子の顔を見上げた
反乱分子を産んだ元凶のこの子は嬉しそうに柚季と手を取り合ってる
「美海!?」
「そ! まさかこんなところで2人に会えるなんて思わなかったよ!」
「えへへ、私もだよ美海!」
この子は桑原美海。私と美海が大学の時によく一緒にいたグループにいた1人だ
卒業してからは遠くに引っ越しちゃったから会うことはなかったんだ
「玲香ったらひどいよ、大事な親友との再会の挨拶がカフェオレ噴射なんてさー?」
「いやごめん……でもなんで美海がここにいるの? 卒業して遠くに引っ越したんでしょ?」
「色々あってねー。ふらふらしていて気が付いたら大学の近くまで来てたんだよ。懐かしいなーって思って歩いていたんだよ」
「それで、私たちを見つけたの?」
「そうそう! 会えてうれしいよ玲香! 柚季!」
あたしと柚季は立ち上がって、わーっと3人でハグする。他の人の目が気にならなくもないけどひとまず置いておこう
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