第58話 トークショー
いつもの車にて、とある住宅地での集金を行っていたミクル一同であったが、今週も住宅の庭先である女性から声をかけられ……。
「そんでね。この前、八百屋のおじさんからね。お姉さん、今日も若くてお美しいだって。お世辞でも嬉しいわよねー♪」
「いや、お姉さんはいつもお綺麗ですよ」
このお客さんは話が長いのが有名で、集金の足止めに遭うこともよくある。
一度、このトークに捕まると中々離してくれない。
「そーう? なら、おばちゃん、来月も牛乳、沢山頼もうかしらー♪」
「……止めろ、成長期過ぎてるから太るだけ」
大人が牛乳を大量に接種すると、お腹を壊すという現象になるが、その理由として豊富な脂肪分のせいで、消化器系に負担をかけているということになる。
「ふーん。がぶ飲み牛乳は子供の栄養食という感じか?」
「飲むほどに胸も大きくなりますけどね」
「まさに豊満女子ならではの答えやな」
ミクルの自慢げな回答に、その胸をスプーンのようにえぐってみたいケセラ。
限りなく平らなジーラはその言葉に昇天していた。
「それじゃあ、この注文書にサインをお願いします」
「まあ、そんなことよりミクルちゃん。聞いてよ」
「この前なんて、駅前のスーパーの帰り道でイケメンのスーツ姿の人に声をかけられてね。アイドルのスカウトかと思ってたら……」
実はミネラルな健康食品のご案内だったとイタズラな笑いをするおばちゃん。
「また始まったか。これでおばちゃんの世間話は何回目や」
「……12回目」
「よう覚えてんな。ジーラ?」
「
「ゲーム関係ないやろ?」
12回目も話を持ち越され、その会話を聞き続けるミクルも大したものである。
「──って言うわけでさ。ミクルちゃん、おばちゃんの話、聞いてる?」
「えっ、はっ、はい!?」
「じゃあ、今、おばちゃんが何を言ったか答えてごらん」
「ええー!?」
「……くっ、中々手強いお客さんだな」
上の空で話を聞いてなかったミクルがこちらに顔を向け、ジェスチャーで会話の続きを知ろうとする。
『それは、カレーライスの、ルーの辛さや』
ケセラがスプーンを持つような手を大きく振り、激辛を口にしたようにしかめっ面をする。
そんなジェスチャー返しでミクルに正論な答えを返していたが……。
「なるほど、彼の話ですか」
「ちゃうわ。どんな耳してんねん」
多分、ミクルの耳は馬の耳に念仏だろう。
「──ええ、彼はルールを華麗に理解してますね」
『……ゴクリ』
さあ、ミクルの勘違いな答えにおばちゃんはどうキレるのか。
息を飲んで黙りこむ三人組。
「そ、そうなのよ! 彼ったら大胆な一面があってワイルドだけど、意外と紳士的な面もあってね」
「今回のコーヒー牛乳も彼からお勧めされて注文してみたんだけどさあ……」
あれれ?
偶然にしては出来すぎているが、素の反応からしてみて、おばちゃんが話を合わせてるじゃないっぽい。
「ジーラ。ここはミクルを置いて二人で集金再開しようか」
「……せやな」
ケセラがジーラと共におばちゃんの居住エリアから離れようとする。
BGMは残酷な配達員のテーマでお送りしますわー♪(DJリンカ)
「あの、DJですけど、リンカもいるのですけど?」
「……JD背後霊か」
「失礼な。リンカは立派な会社員で、きちんと健在ですわよ」
リンカも渋々付いてくるのを尻目に未だにおばちゃんとのトークから抜けれないミクル。
こんなウチらを許せ、君の犠牲は忘れない。
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