28話 三者それぞれ会話中(2)

 前で二人が歩いている。少し距離を取って私はを取り出す。


 それは金属のように光る円形で、開くと上側に鏡が付いている。


「こちらメイ、応答願う」


 少し間が開いて、その鏡に自分の姿が映らなくなる


 その代わり、ある男が顔を見せる。そして、応答が返ってくる。


『だーかーらー、そんなに固くなくていいのにって言ってるでしょ』


「……でもこういうのって雰囲気が大事じゃない?」


『別にそういうの求めてないし、必要ないでしょ』


「確かに」


 私は納得した。


 それと同時に、なんでこんなことを言い合っているのだろうと少し自己嫌悪をする。


 それを察したかのように鏡の男は話を振ってくる。


『で? どうしたの?』


「……わかってるんでしょ? 


 私は最後の部分を強調する。


『そうだけど、ちゃんと報告してくれないと。僕が気付いてない事があるかもしれないし』


「はぁ、じゃあ一応報告ね」


『はいはーい、どうぞー』


「件の人物と接触完了、それと同時に一緒に行動することが決まった。何か情報がつかめ次第随時報告する」


 軽い報告をして男の姿を見ると、うんうんと頷いている。


『了解、うん、だいたい僕が知っている事と相違ないね』


「そうだと思ってたけど」


『……』


「……」


 しばしの沈黙。私はこの意味が解っていたが、あえて黙ったままだった。


 沈黙に耐えきれなくなったのか、男は口を開く。


『……で、彼女については一切報告がなかったけど』


「まだ何とも言えない、でも間違いないと思う」


 男の顔が険しくなる。彼も見ていたからおおよその見当はついていたのだろう。


『それはなぜ?』


 それでも彼は一応というように確認してくる。


「女のカンって結構鋭いのよ」


 瞬間、彼の表情から険しさが抜ける。


『それってこういう場合にも適用されたっけ。まぁいっか。とりあえず、何かわかったら報告をちょうだい。僕も一応見るようにするけど』


「はいはい、わかってるって」


 すると突然、前から声が響いてくる。


「おーい、メイ! どうした? はぐれるぞ!」


 顔を上げるとイツキがこちらを見ている。その横でハルが訝し気な目で私を見ている。


「呼び出しがかかったから行くわ」


「了解、じゃ、くれぐれもバレないようにね」


 その言葉を最後に、相手の声が聞こえることはなくなった。


 私は彼らに向かって走り出す。


「どうした? 何かあったか?」


「いえ、大丈夫よ」


 私は彼らとともに森の中を進んでいく。

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