29話 三者それぞれ会話中(3)
「おい、聞こえるか?」
森を進みながら、吾輩は問いかける。返事は直ぐに返ってきた。
――なんですか、急に。
その声は頭の中に響く。
「まあ聞いてくれ。先程、吾輩の聖域に侵入してきた不届き者がいたんだが」
――おいおいどうした。急に話しかけてきて。
「いたのか。貴様も聞いておけ」
――で、不届き者がなんですか。もう殺したんですか。
――決められた道以外は入らないって契りを破った馬鹿は死ぬべきだろ。
「いや、死んでいない」
2人が息をのむのを感じる。
――え、生かしたんですか。
――何してるんだよ。まさか力が及ばなくて負けたとでもいう気か?
「ああ、あながち間違いではない」
――――は?
2人の声が重なる。
「吾輩の『
――え、それって。
――おいおいマジかよ。四年前に来なかった以上もう終わったと思ってたのによ。
吾輩は沈黙する。それに続いて相手も静かになる。
多分理由は違うだろうが。
「今、あいつらはイチアに向かっている」
――あいつ、ら?
「ああ、伝えるのを忘れていたな。三人組だった」
――え、全員?
「いや、一人だけだ。他の奴らはわからん」
――そうか、報告感謝する。
「これからどうする?」
――様子見しかないだろ。俺たちはここから出られない。
――もどかしいけど仕方ないですね。
「一応吾輩たちも森から出るまで監視しておく」
――頼んだ。
――じゃあ、また進展があったら教えてください。
「ああ、わかった。じゃあ失礼」
そうして、連絡は終わった。
吾輩は足を出して歩き出す。
静かに森を進む。もうそんなに月日がたったのかと考えながら。
首元には赤い首飾りが光っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます