23話 古代魔導具
私は部屋に戻り、今日の会談についての資料を整理する。
今日の仕事はそれで終わりだ。
その時、扉のノックが静まり返っている部屋に響き渡る。
「誰だ?」
「騎士団副団長のフェモネです。報告したいことがあります。少しお時間よろしいでしょうか?」
「わかった。入れ」
「失礼します」
扉が開き、フェモネが中に入ってくる。
「それで、報告したいことは何だ」
「はい、こちらになります」
フェモネはポケットから布に包まれた何かを取り出す。
「これはなんだ?」
「はい、ご覧ください」
フェモネはその包みを丁寧にほどいていく。中から出てきたのは、
「これは……『不開の錠』? なんでこんなことになってるんだ?」
そこにあったのは完全にカギとしての機能を失う程大破した南京錠だった。
「もう一つございます」
そう言いながらフェモネはポケットからもう一つの布を取り出す。包まれているものの大きさはほとんど同じのように見えるため、中に入っているものも恐らく同じだろう。
「なぜ、
私は内心焦っていた。これを付けているところは大切な部屋や金庫だけである。早急に対策を練らなければならない。
「1つは地下牢から廊下につながっている扉、もう一つは禁書の部屋の扉です」
「……」
俺は頭を抱える。犯人はわかった。しかし彼を捕まえることはできない。もうすでに国の外に逃げてしまっている。
「他にも
「は? なんだ?」
「地下牢から上がる階段の部分に『
「……そうか」
恐らくミナトの仕業であろう。
「被害は出ているか?」
「いえ、今のところ『煙』を吸った人間はいません」
ほっと安堵の溜息が出る。被害が出ていないだけマシだろう。
「報告は以上になります」
「ああ、わかった。ご苦労」
「失礼しました、陛下」
フェモネは一礼し、扉を開け静かに退出していった。
「なんで面倒事が起こるかね……」
ただでさえアルベガ殿の国との問題で忙しいというのに。
禁書の棚は彼に見られてしまっただろうか。恐らく彼にはこちらの世界の文字は読めている。
スルーしてくれているとありがたい。
「どうすればいいと思う? リリア」
私は背もたれに全体重を預け上を向き、ぼそりと言葉を零す。
困った時、今は亡き妻に問うてしまうのは、私の悪い癖だった。
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