エピローグ


 それからのことを少しだけ語ろう。


 覚悟はしていたのだけれど、

『突撃アイドルポリスー~アイドル舐めたらアカンぜよっ!』の第一話ロケはお蔵入りとなった。

 企画自体は存続する予定ではあるが、さすがにハルカの一件は刺激が強すぎると判断されたようだった。

 まぁ、あんなの放送したらハルカちゃんの今後のアイドル活動にも良いとは思えないしね。


 とはいえ、人は動いたわけで……お金は掛かったわけで……あのロケの費用、ぜーーんぶ私の自腹になりましたとさ。

 金額を聞いた時は、卒倒しそうになったよ。

 聞きたい? 一千万は余裕で超えてたよ。いや、私、全然払えるんだけどね。トップスター舐めんなよ!


 というわけで、私の努力、友情、経済力、勝利のお陰もあって、その後、ハルカちゃんはエターナルスター学園に復帰することになった。


 ただ、悪者が逮捕されたとはいえ星空カフェの借金が泡になって消えるわけではない。じゃあ、何でハルカちゃんが復帰できたかって言うと……。

 うん、何なんだろうね、あの人。

 誰のことかって? もちろん学園長ですよ! 

 遠野麗子が逮捕された後、あの人、あっさり私財で星空カフェの借金を補填したんだよ!?

 しかも無利子、無期限。

 私があれだけ頭下げても、全然お金の工面してくれなかったのにさ!


 ま、いいけどね。

 今なら学園長が何を求めていたのか、突撃アイドルポリスのロケを終えた今なら、ハルカちゃんの涙を見た今なら、何となく分かるような気がしたから。


 そして、ハルカちゃんの復帰は、エターナルスターお正月ライブとなった。

 しかも、あのクリスマスの夜に叶わなかった、黒帳美夜と星空ハルカのステージ対決までありときた。


 え、結果? えっと、勝ちましたよ。

 今でも夢なんかじゃないかと思うけど、なんか勝てちゃったんだよね。

 ハルカちゃんがアルティメットプリマアピールを成功させたときは、『あ、私のアイドル人生終わった……』って思ったんだけどね……でも、勝てちゃった。


 アイドルポリスやって以来、妙に調子が良いんだよね。

 いや、わたしの調子が良いとか悪いとかの話じゃないよね。だって、ハルカちゃんはこんな偽物の黒帳美夜と違って、本物の主人公。

 アイドルの神に愛されたトップオブアイドルなんだから。


 きっと、色々あったし、ハルカちゃんが本調子じゃなかっただけに違いない。

 

 とにかく、私、黒帳美夜は辛くも星空ハルカに勝利。

 女王の座を守ることに成功したわけだけど、


「――美夜さん、今回は負けちゃいましたけど、次は絶対、ぜぇぇぇぇったいに負けませんから! って神様にお願いしてきました」

 

 ライブの直後、少し遅い初詣に誘ってきたハルカちゃん。

 ペアデザインの晴れ着でお参りした帰り道で「何のお願いしたの?」って軽く聞いたら返ってきた、改めての下剋上宣言。

 

「ちょ、それ願い事じゃないでしょ!」

「あれ? そうでしたっけ? ああ、確かにそうですね。じゃあ宣言してきました!」

「初詣は、神様に目標を宣言するイベントじゃないわよ!」

「えへへ、ちょっと間違えました」

 

 くぅぅ、あざとい可愛い。

 でも裏なんて一切ない天使なんだよなぁ。

 はぁ、この笑顔だけでトベる。


「って、まだ私を倒すとか諦めてなかったの!?」

「当然です。だって私は、美夜さんと同じスタープリマになるんですから」


 まさか、まだ下剋上を諦めていなかったなんて……。

 カフェの一件で、ハルカちゃんを助けてあげることもできたし、もうハルカちゃんから女王として認められた。

 ハンバーガー事件の記憶は塗り替えられた、と思っていたのに……そうか、そうなのね。カレプリ主人公・星空ハルカの視点では、私のような紛い物はまだまだだって事なのね!


「ハンバーガー事件の傷は早々癒えることは無いってこと……か」

「え、ハンバーガー?」

「いいの、もう何も言わないで。いいでしょう、この黒帳美夜が全力であなたを迎え撃ってみせるから」


 ぶつかる二人のアイドル視線。

 これが本当にアニメだとしたら、二人の間にはバチバチと火花が散っていたことだろう。

 だが、ハルカちゃんはすぐに視線を落とすと、頬を朱に染めて問いかけてくる。


「それで……その……美夜さん、あの約束覚えてますか?」

「約束……って、あれ? もしハルカが私に勝てたら伝えたい事があるっていう……」

「そうです、それです。です」

「忘れるわけがないじゃない」


 だって、その伝えたい事って

『後輩に負けるようなスタープリマは要らない。エターナルスター学園の女王にふさわしくない』ってことでしょ!?

 そんな恐ろしい約束を私が忘れるわけがないじゃない。


「そっか……約束覚えててくれたんですね」


 何か大事な思い出を抱きしめるように、ハルカちゃんはそっと優しく呟いた。


「じゃあ、今はこれ以上何も言いません。私の想いは、美夜さんに勝ったその時に……しっかり耳をそろえて伝えますから」

「私の卒業まで一年とちょっと。その想いとやら、一度も伝えられなくても泣かないでよね、ハルカ」


 やだやだ、なんでこうカレプリアイドルってのは負けん気が強いんだろうか。アイドルなのに脳筋なんだよな。

 でも、私もずいぶんとそれに毒されてきたらしい。


「美夜さんには、絶対に負けませんから!」

「こっちこそ、ハルカには絶対に負けないからね!」


        ◇ 


 そんなライバル宣言と共に、不敵な笑みを浮かべる二人のアイドル。


 ――美夜さんの隣に立つためには、美夜さんと同じくらい凄いアイドルじゃないと、きっとその輝きに負けてしまうから!


 ――ハルカの下剋上は絶対に阻止してみせる! そしてカレプリの世界も、私のアイドルに囲まれたうはうはセカンドライフも絶対に死守してみせる!


 互いの認識が大きくズレているとはつゆ知らず、二人のアイドルの両片思い勘違いアイドルライフはまだまだ続くのだった。



 おしまい。



――――――――――――――――――――



『転生して女児向けアイドルアニメの女王になったのに、主人公キャラが猛追してくるんだけど!?』


 これにて完結となります。

 最後までお付き合いありがとうございました。


 アイ〇ツの10周年企画の流れに乗って勢いで書いてしまいました。

 ターゲット層が非常に狭い作品になってしまったような気もしますが、楽しんで貰えたなら幸いです。


 次回作については現在執筆中。

 内容は以前告知していた、このすば系、ポンコツヒロインたっぷり異世界転生ファンタジー。

 ちなみにギャグ6、恋愛3、シリアス1くらいのつもりで書いています。

 

 今回は少し時間が掛ると思うので、気長に待ってもらえたら嬉しいです。

 更にその次は未定ですが、気が向いたらTS百合の続きを書くかも?


 まぁ、あまり先のことを言うと鬼に笑われてしまいそうなので止めておきますか。


 というわけで、これからも応援よろしくお願いします。

 今後の創作活動のエネルギーになりますので、作品を☆☆☆やフォローなどしてくれたら、なお嬉しいです。

 更に、私をフォローしてくれたら、新作が始まったり、連載再開した時にすぐに気づけて一石二鳥ですよ♪


 では、また次の作品でお会いできることを願って。

 間一夏はざまいちかでした。

 

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