転生して女児向けアイドルアニメの女王になったのに、主人公キャラが猛追してくるんだけど!?

間一夏/GA文庫大賞3作連続・三次選考

第1話 プロローグ

「きゃー、美夜様よ」

「うそ、本当だ……。わたし入学式の挨拶以来、美夜様を生で見るの初めて……」

「すごい綺麗……さすが我がエターナルスター学園の女王です!」

「史上最速、十三才でスタープリマに選ばれてからステージでは一度も負けたこと無いらしいよ」

「さすが我が校のアイドル科エースにして国民的アイドル――黒帳くろとばり美夜みや様」


「「「はぁ……す・て・き」」」


 ……。

 …………。

 聞こえる……。

 すっごく聞こえる……。

 今日も今日とて、私を褒めたたえる声が方々から聞こえる。


 ──朝の通学路。


 レンガ造りの豪奢ごうしゃな正門を抜け、中等部の校舎へと続く薔薇の小道に一歩足を踏み入れる。

 すると、誰も彼もが私の姿に足を止め、ほぉっと深いため息をつく。


 そんな彼女達の様子を横目でうかがう。

 あの子もその子もみんな可愛い。

 あんなに可愛いアイドルたちが、私に陶酔とうすいし、心酔しんすいし、憧れの眼差しを向けている。

 それはなんて──。


 ――なんて心地いいんだろう……。


 うふふ、うへへ。ニヤニヤしちゃう。

 おっと、国民的スターにしてトップアイドル、黒帳美夜がニヤニヤなんていけない。よくない。

 私はパンパンと軽く両頬を叩く──と、


「きゃ、美夜様が、何か気合を入れてるわ」

「きっと、もうすぐ全国ツアーが始まるからじゃない?」

「あれよ、あれ。朝の連続テレビラノベの主演に決まったからに違いないわ」

「どちらにしても……凛々しい姿だわ……」


「「「はぁ……す・て・き」」」


 色々深読みしてくれるけど全部違う。

 可愛いアイドルに囲まれてチヤホヤされる優越感に、崩れそうな表情を引き締めただけなんだけど……ってか私、何をしても褒められるな。

 ちょっとボロ出しても、勝手に良いように想像してくれる私のファン。

 グッジョブだぜ、お前たち。


 では自己紹介――私の名前は黒帳美夜。


 エターナルスター学園アイドル科中等部2年。

 齢十四にして、一握りのトップにしか与えられない称号〝スタープリマ〟を冠するアイドル。

 押しも押されもせぬ国民的大スタァ。

 そして――。


 ――元社畜OL、黒岩宮子くろいわみやこ

 ――享年三十二才。

 

 うんうん、言いたい事は分かる。中二病? 違う違う。

 中二病だったら、もうちょっとカッコイイ前世の設定考えるからね。

 頭打っておかしくなった? それも違う。

 おかしいことは否定しないけど、頭は打ってない。


 私は至極まじめ。

 社畜嘘つかない。


 私はそう……正真正銘の転生者。

 言うなれば〝転生アイドル〟というやつなのです!

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