第一話 6-7

 例としてネイアが魔法魔術学院卒業後、ほぼ内定していると言って良い宮廷付き魔術師の職は、その末端の使い手であっても1200ギルダール。

 学園に留まり、導師職に就いたとしても初年度は600。これに加えて、アヴァロニア王国にあって公的な研究費は全額、個人的な研究であってもその有用性が認められれば一部、或いはほぼ全額を国と学院とが折半で支払われることが規定されている。

 ネイア自身の志望、やりたいことができると言う点において、長老職に勝る。それは天職と言って差し支えなく、また研究成果によって得られる利益を考えれば、金銭的にも劣ったものではなかった。


「これが我々の経営方針。哲学と言い変えてもいい。長老は安楽椅子にふんぞり返っているだけでも色々、美味い話しが入ってくるとは言え、決して楽に稼がせるつもりは、ありませんよ」


 金が欲しければ実績、実力を示せ。それがバランの口癖であったと、アルベルトは語る。


「働かざるものは、ってやつかしら。何にせよ、ここまでの話しを聞いても私の意思に変わりはない」


 それは明確な宣言。契約に基づく、効力あるネイアの権利者としての発言であった。


「分かりました。お嬢様のご意志を尊重しますがまあ、長老会には年一回程度、参加してください。それ以上、こちらから求めることはありませんので」

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