現れたのは異質

バブみ道日丿宮組

愛とEYE

 起床。

 身体を起こして、壁時計を見ると12時を10分過ぎてた。

 これはあきらかに寝過ぎだ。

 いくら休みだからといって、なにも12時間も寝ることはないだろう。

「あぁ……」

 頭をかきながら、トイレへと向かう。

 トイレをすますと、そのまま洗面所で顔を洗い、髪の毛を整える。

 大学のレポートをしなきゃいけないが、まぁ……まだ時間はあるし大丈夫だろう。いざとなれば、インターネットして内容をコピペすればいい。これで注意を受ければ、締切は数日伸びるという確定コース。実にいい作戦。

 朝ごはんは何を食べようかと、台所に向かいながら考える。

 買い置きしてた野菜とかがそろそろきれそうだったような?

 とりあえず、冷蔵庫に入ってる缶コーヒーを飲もう。箱買いしてるから100円以下の嗜好品。コーヒーが本当に好きな人とかコスト考える人は、ちゃんと機械を買っったりする。そのほうが安くすむらしいが、缶コーヒー特有の甘さは作れない。

 いや……数万かけて揃えるよりも気持ちのコストが安いんだ。豆がきれれば、コーヒーのコの字も飲めないからね。

 それはまぁ缶コーヒーにもいえるか。貯蓄がなくなれば、何もなしだ。まっ定期購入コースに入ってるのでないということはありえない。

 お金の消費量が凄まじくなった時期もあったが、あれは異常だった。俺じゃない俺がいたのだ。

 あれは……そうだな。

 魔性の女だった。お金を吸う壺だった。

 セフレ……性的な友だちというのははじめてだったし、少々扱いが雑だったかもしれない。

 お相手は一般に出回らないような逸材。

 なぜこんな巨乳で、かわいいこが?

 そう考えることもあるが、結局は性に一直線で俺たちは友だちという感じではなかった。彼女はセックスするだけの身体ーーもはやダッチワイフみたいなものだった。

 交際費はホテル代が高かったが、それ以外にかかるものは特になかった。彼女は学生にしては攻めた格好をしてて、下着も変わったもの(やけに性的なもの)をつけてた。そのため、こちらが要求するような曇らせはいらなかった。いつでもエロい。それは売り文句としては最高かもしれない。

「はぁ……」

 しかし……今になって『別れたことを後悔するのか?』という疑問は湧きはしない。

 あれ以上にいい女は世の中にたくさんいるだろうし、きちんと彼女になってくれる女がいるだろう。セフレなんて関係は一時的なものでセックスがなくなれば、友だちになれるということじゃないんだ。

 ただ都合のいい女がいなくなっただけに過ぎない。


 そうーーあれは今から半年前のことだ。


 彼女との出会いは大学の合コンだった。

 飲みすぎて帰り道をふらふらして歩いてた彼女を送り狼したのが始まりだった。見た目は可愛かったし、性欲に素直になった。

 前に抱いたやつも良かったが今回のはとびっきりの獲物だと少し性欲剤を含んでみようと思った。

 結果は3時間にも及ぶ性行為。まさに凄まじいの一言だった。

 こんなものが俺の中にまだ残されてて、精子を吸い出される彼女の膣。

 衝撃な出会いとしかいえない。

 朝起きると、彼女は怒ってこなかった。合コンの空気がわからず、ただひたすらアルコールを接種してただけという話だ。介抱してくれた人に何も返せないのは嫌だったので、身体で満足してくれたのであればよかったと。

 何気ない会話が次々と生まれる。

 あの頃はまだ普通だった。

 会話もしたし、一緒にお風呂とかも入った。

 彼女はよく笑う人だった。

 まるで運命の人にあったみたいなことを言われたが、俺にはセフレ以上の愛情はその時ですらなかったので、彼女が付き合いたいといったときは身体の関係だけでいいのかと聞いて彼女は了承した。

 そこから、すぐに普通のセックス。名器はすごかった。挿入するだけですべてを包み込む渦が吸い付いた。最初は我慢が大変だった。あまりにも気持ち良すぎるので、射精を我慢するのを何度も体験し鍛えた。

 避妊はしなかった。彼女の方で避妊薬を飲んでくれるとこのことだったらしいので。それはちょっとお得だった。いちいちコンドームなんて買いに行くのはめんどうし、ムラムラしてる中で装着するのはイライラ感が強い。

 そうしてその関係は、半年も続いた。

 オナホか、ダッチワイフ以外か。

 そんな存在に俺は出会えてしまった。


 明くる日。

「あっ、あぁ……ぅぅぅぅ」

 ラブホテルに響く声は気持ちよさのものではなく、苦痛に満ちた声。

 俺は首を締めながら彼女を犯すのにどっぷりと浸かってた。

 死なないように少し開放して、また締める。

「うぅ、あ、っ、っ」

 声にならない声をきけば、さらに膣が陰茎を激しく包み込む。

 彼女は常々苦しそうな声をあげるが、表情は高揚しておりだいぶ感じてるようだ。 膣から溢れるラブジュースの量が増えてるのがその証拠だ。

 気持ちいいことには必ず終わりがくる。

 5分で一度、10分で二度の射精をしたのだから、三度目もまもなくだろう。

 より高い射精のために、首を一層強く締める。

 そして果てる。

 首絞めと性交から開放された彼女はむせるような吐息を痙攣と一緒に繰り返した。

 死んではいないから大丈夫だろうと、先に着替えを始める。

 彼女を見ると、うるっとした瞳がこちらを見てた。

「ぁはぁぁはぁぁはぁ」

 まだ足りないのだろうか?

 いや……そんなことはない。

 ベッドシーツは彼女のラブジュースと俺の精子で濡れに濡れまくってる。彼女の身体は汗で光を放ってる。

 彼女は何度も絶頂したおかげで動けないことを俺は理解してる。名器は自分自身も気持ちよさを倍増されるらしく、俺の倍の数絶頂を迎えて、ラブジュースを多く吐き出す。

 出たあとに掃除するラブホテル店員は大変なことだろう。

 もっともゲイカップルが休憩するよりはきれいに違いない。ラブジュースは排出物ではあっても、大便のような見るのも億劫な汚物ではい。

 彼女との関係はかれこれ2年は経ってるかな。

 名器はいつまでも名器であるのだが……。

「……潮時かな」

 新しい器を体験したくなった。

 彼女はオナホであって、恋人ではない。

 彼女が俺を今どう思ってるかはわからない。

 どうしてだっていうと、デートらしいデートなんてしたことはないし、食事をしたことすらないからだ。

 ただ毎週こうして会ってホテルで性交をする。

 そんな関係は彼氏彼女といえるのか?

 俺は違うと思うね。

 恋ってのはもっと純情めいたものだ。こんな肉欲まみれな日常は断じて違うだろう。今からそういう付き合いにすればいいだけの話だが、

「……」

 彼女の顔を見てもそうは思えない。

 ーーダッチワイフ。

 そんな肉の塊だ。

 ほどよく膨らんだ胸。子猫のような小顔。小さい口。小さなおしり。ちょっと大きいふくらはぎ。

 傷が残るプレイは首絞めぐらいだが、それも強くは目立ってない。なにも殺そうとして握ってるわけじゃないからね。性交中ちょっと息がしづらくなる。ただそれだけだ。

 ホテル代の半分をテーブルに置くと、先に部屋を出た。

 フロアにいた店員に支払いは彼女がすると伝えて、彼女から距離を取った。

 あの後から彼女とは会ってない。

 俺が呼んだ日に必ずやってくるだけで、彼女がどうこうしたいというのはあまりなかったというかなかった。

 連絡はいつもこちらからで、向こうからというのはない。

 同じ大学でもないので、遭遇する確率はない。

 もっとも大学生とこちらが認識してるだけで、社会人やら高校生なのかもしれない。

 高校生の場合は、あんだけのお金を毎週使うことができるのかと怪しくなる。淫靡な下着は安くはないだろう。たわわと育った胸のためブラジャーはそれなりのものを選んでる。

 社会人であれば、夜に会ってるというのに違和感はわかない。お金も持ってることだろう。

 とはいえ、自己主張がまるでない彼女がきちんと会社で仕事ができてるのか疑問がわいてくるが、気にしなくていいことだろう。

 もう別れた相手だ。心配をしてもまるで意味がない。


 それが半年前。


 回想してみても、自分のクズさが露見しただけだったな。

 下手したら殺してたというのに、焦りなどない。

 ただ陰茎が包まれるその至高の時間がよかったというただの過去という。

「ん……」

 リビングで落ち着いたところで、スマホが光ってるのが見えた。

「えっ……?」

 開いて見て目に入ってきたたのは、久しぶりにみる彼女の名前。

『今大丈夫ですか。大丈夫じゃなくても、今なら言っておいた方がいいかなと思ってメッセージを送りました。音声でもいいのであれば、通話はできます』

 少し混乱した。

 なぜ彼女が今になって連絡を寄越したのか。

 答えが見えてこない。

 またセフレに戻って欲しいとか? 今度こそ恋人にして欲しいだとか?

 メッセージを返すのはめんどくさいので、電話することにした。

「もしもし?」

「……はい」

 懐かしい声だった。衰えを感じないアニメ声。

 少しだけ勃起しそうになった。

 そういうことじゃないんだと、

「なんのようだ」

 あくまでもなんでもないという体で行く。

『たくさんえっちしたこと覚えてますか?』

「あぁ、いろんなのしたな」

『それでですね、私エイズだったんですよ』

「えっ……?」

 何を言ってるんだ?

『首絞められるの好きになっちゃって、他の人にも似てよりかったりしたのをしてもらってるうちに感染っちゃたみたいなんです。そういうことする人たちはもう生命のリミットが短かったからみたいなあれらしいんですよ。

 面白いですよね。私に苦痛を痛みを与えてくれてきた人たちがみんな感染するなんて。とってもはっぴーじゃないですか』

「ふざけるなよ、何がエイズだ! 嘘をつくんじゃないよ」

『あなたは絶対感染してます。だから、一緒に病院に行きましょう?』

「他にはないだろうな!?」

 不安が強くなる。嘘の可能性だって出てくる!

『髪の毛で作ったあなたそっくりのぬいぐるみに釘を付けたりとか、あなたの精液ドレッシングだとか、あとは一度家に入れてくれたときにいろんなところに、私の体液をつけた。掃除しておちることもあるだろうけど、あなたはそんな几帳面じゃないからしっかりやらないと落ちない。いろいろな液体にも混ぜた。だから、どこからか感染したかはわからないの』

 呼吸で胸が痛くなった。寝てる間とか買い物行ってる間にまさかそんなことをされてるとは思いもしない。

『発熱・のどの痛み・だるさ・下痢など、風邪やインフルエンザでの筋肉痛はなかった?』

「……ない」

 エイズの症状は……まだ出てない。

 2年。そう2年、彼女とはセックスをしてた。いつ彼女がエイズに感染したのか。別れる前なのか、最初からなのか。

 避妊は薬でコンドームはしなかった。これで感染しないのはおかしい。

 彼女がいうように体液をいろいろな場所につけたというのであれば、それで感染したということもある。

「なにが望みだ」

 合コンにいたのはなんだったのか。

『私を見てくれるようになるなら、これがきっと一番だと思ったんですよ。一緒に死ぬまで入れますよ。えっちもずっとできます。私あなたのプレイが一番気持ちよかったんです』

 俺もそうだった。

 だけど……エイズは……違うだろう!

「どうしてエイズを隠してた」

『あんまり恋人っぽいことができなかったから』

 それは俺がそういう関係でいいかといって同意をもらったからだ。

 つまり、彼女は普通の恋人関係がしたかったということになるだろう。

『ちゃんと判別できるようになってから、もう一度一緒にいたいって思ったんだ』

 悪魔か。

「……わかった。病院にはいく」

『うん、30分後に駅前に集合ね』

 明るい彼女の声。

 俺が追い詰めてしまったのだろうか?

 彼女のをオナホとしてみたのがいけなかったのだろうか?

 

 もうわからない。


 俺はおそらくエイズになった。

 これから一人でその恐怖に耐えられる自信はない。

 だから、これからは彼女をきちんと見る。


 それが俺が始めたセフレ関係の終焉の結果だ。


 了。




 

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現れたのは異質 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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