第3話 始まる物語

「はぁ…。じゃあ最後の質問。結局私にどうしてほしいの?」

 私は半分諦めにも似た心地で問うた。彼は少し悩んだのち、私の目を見つめて言った。

「君が僕と一緒に居て、僕に愛されることを望むなら、横にいてほしい。旅に出たいんだ。どんなこともできるし、どこにだって連れて行くよ。

 僕と別れて、関係を断ちたいならそれでいい。これは僕からの提案。選んでくれないかな」


 私はその言葉を、眩しさと共に見ていた。私がいままで見てきた君は、こうしてはっきりと愛を教えてくれる人ではなかった。

 今、私だけを見て、この言葉を言ってくれている…。その事実だけでもう、私の答えなんて決まっているようなものだ。


「…仕方ないな。隣にいるよ。こんなに愛おしい人を、手放せなくなっちゃったもん」

「良かった。ありがとう。それじゃあ、言った通り、旅をしよう。運命を作り出す旅を」

 君は立ち上がり、私に手を差し伸べた。

「それじゃ、行こうか。ゆき

 私はその手を取る。

「連れて行ってね。龍実たつみ


 私が始めた物語こいは終わった。そして、君が始まる物語あいが、ここから紡がれる。


 これは、私と君の、運命を作り出す物語。

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