第27話 アップちゃんの秘密
「お、お父さん?」
「はい。娘のアップちゃんがお世話になっております。風のうわさでセントさんのパーティーにいると聞きましたので」
とりあえず、俺の部屋に入れる。
アップちゃんパパは酷くやつれた顔をしていて、もうすでに心身ともにガタがきているのが伺える。
そりゃあ、娘がいきなり家出したんだ、無理もない。
「アップちゃんは、元気でしょうか」
「会いに行ってないんですか?」
「顔をあわせたら、逃げてしまいますので」
「親に反対されて、家出したとか」
「はい……。だらしない父親で申し訳ございません」
アップちゃんを家に帰す協力をしてくれってとこか。
まったく、めんどくせえ。だからアップちゃんをパーティーに入れたくなかったんだよ。
ていうか、まず肝心な部分を俺は知らない。
「アップちゃん、ギルドマスターになりたいみたいですけど、なにがあの子をあんなに駆り立てるんです? 誰かに憧れて、みたいな?」
「いえ、話すと長くなるんですが……」
「なるだけ短く」
「アップちゃんには、大好きなおじいちゃんがいたのです。ある日、おじいちゃんと山菜を取りに山を登ったのですが、偶然その日、とある竜人族もその山に用があったのです」
竜人族……。
「山を根城にしている、『エロマンガ二デテクルゴブリン』の討伐クエストを受けていたそうです。その竜人族は、ゴブリンを倒すため、なんと口から発射したエネルギーで山ごと消滅させたのです」
……。
「アップちゃんは幸運にも無傷でしたが、おじいちゃんは……。アップちゃんは、件の竜人に復讐するため、ギルドマスターになれるほど強くなろうとしているのです」
「訴訟を起こしました?」
「それが……その山は一般人立ち入り禁止だったので」
アップちゃん側に落ち度があるわけか。
さて、なーんかこの先の展開見えてきたぞ。
「で、その竜人の名前は?」
「イステです」
はい、アップちゃん追放します。
追放追放追放でーす。
当たり前だろ。アップちゃんとイステ、どっちが使えるかなんて考えるまでもない。
イステの正体を隠して……とか絶対に嫌だ。そんなのスーノとウェスタだけで充分だから。
実はイステは仲間でしたってバレるも面倒だし。
決めたから、これ決定事項だから、なんだかんだパーティーに居続けるオチとかないから。
マジで追放するから。
子供だろうと容赦しないから。
「どうか、どうかお力を貸してください。ギルドなんて、アップちゃんには早すぎます! 危険です!! アップちゃんを連れ戻したいのです!!」
「わかりました。協力しましょう」
「え!? 本当ですか!?」
「もちろん」
「で、でもアップちゃん強いですよ?」
「別にいいですよ」
「素直で良い子ですよ?」
「平気です」
「将来性ありますよ?」
「あんたどっちの立場なんだ」
「あ、すみません。つい親バカが発動してしまい……」
「とにかく、この件は俺に任せてください」
とはいえ、どうしたものか。
アップちゃんは頑固だからなあ。ウェスタたちは協力してくれるのだろうか。
いや、させる。絶対に。
アップちゃんの復讐を諦めさせる方法、か……。
「あ、そっか」
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