第24話 改めまして

 毎度お馴染みの酒場にて、今後のことを話し合うことになった。

 行方がわからないダブの連中は一旦置いといて、ランク上げに専念するのである。


「そろそろギルドマスターランクになりたいよな。お前ら、いいクエストない?」


 4人で依頼書が貼られている掲示板を睨みつける。

 できるだけ楽で、報酬もいいクエストが好ましい。


 スーノが首を傾げた。


「どれもこれも大変そうですね。……そういえば、ウェスタさんって、Cランクだったころから何度かAランククエストに挑んでたんですよね?」


「まーねー。さすがに仲間と一緒にだったけど。懐かしいな、一番苦労したのはダーク」


「おーいウェスタちゃーん」


 えげつないほど不自然に会話を中断させた。

 ウェスタも察したようで、あははと話を終わらせる。

 こいつ、ダークエルフ殲滅クエストに参加したことを喋りかけやがって。

 このアホタレが。


 こいつらの仲間に戻ったものの、やっぱりスーノウェスタ問題は面倒だ。

 いっそバラしてしまいたいが、穏便に済ませる手段が思いつかない。


「ん、これいいじゃん。Aランククエスト『チキチキ、春のド変態パーティー夏の陣』」


 女子たちが「えー」とドン引きした。


「なによそのクエスト」


「絶対やりたくないです!」


「春なのか夏なのかハッキリしてほしいですわ!」


 ちなみにいまは秋である。


「でも楽そうだぜ? 男女交えて大乱行、最後まで起きていた人間がいるパーティーが優勝。ほら、疲れたらスーノに体力回復してもらえばいいし、サウムのエナジードレインで他の参加者の生気を奪えばいい」


「いくらセント様の頼みでもそれだけは嫌ですわ!」


「ちっ、しょーがねーなー」


「あん♡ その冷たい眼差し、興奮しますわ♡♡」


「あっそ」


 露骨に嫌な態度を取っても、こいつらは何も言い出さない。

 これが俺の性格だからと、受け入れてくれているのだろう。


 すると、ウェスタが一枚の依頼書を指さした。


「これなんかどうよ。無敵無敵ムテキングスライム討伐」


「どんだけ無敵なんだよ」


「Aランククエストだけど、私たちなら大丈夫よ!」


 にしても無敵無敵ムテキングスライム、聞き覚えるがあるな。

 あぁ、以前イステと討伐クエスト受けた『ジ・アルティメット強すぎ無敵スライム』の亜種かなんかかな?


 途端、ウェスタが後ろを振り向いた。


「どうかした?」


「いや、なんか視線を感じたんだけど……気のせいだったみたい」


「?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 めちゃくちゃ無敵だった。

 手も足も出なかった。マジで。

 初手、サウムがエナジードレインをしようと接近した瞬間、スライムから剛腕が生えて一発KO。

 続くスーノ、ウェスタも、ワンパンで伸びてしまったのだ。

 しかも俺だけ何故か二発。


 俺が誇る完璧パーティー、まさかの惨敗である。


「セント様、こんなことならイステさんも連れてくればよかったですわね……」


 イステならまたスライムの根城ごと消滅させてくれるだろうけど、あいつに頼るのリスク高いんだよな。

 スーノとウェスタの秘密、いつ話すかわかったもんじゃねえ。


 てかあいつの記憶から賢者の書を作ればよかったじゃん。

 そしたら何もかもが上手くいってたじゃん!!


「セント様、どうします? イステさんを入れてリトライしますの?」


「いや、新しいメンバーを増やそう。パーティーを強化するんだ」


 イステはあくまで最終手段。

 今後、またダブと戦闘するかもしれないとなると、パーティーの総力を上げておく必要がある。

 ここで強いやつを加えて、楽に、賢く、ギルドマスターまでの道のりを短くするのだ。


「いい人知らん? ウェスタ」


「そうねえ。……あ、なら私の友達がいいかも」


「友達? 強いの?」


「小さいけど、やるやつよ。田舎に住んでるんだけどね、ちょうどこっちに上京するんだって」


「ほーん。どんなやつ?」


「女の子よ」


「女?」


「うん。八歳」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌日、ウェスタがマジで子供を連れてきた。

 金髪の、丸っこい顔をした女の子だった。


「アップちゃんでみゅ! よろしくお願いしまみゅ!!」

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