見知らぬ子どもに襲われたんだが?

 町から出発し、5分も経たないうちに大洞窟が見えてきた。


「あれがガラム大洞窟か」


 大洞窟の存在を聞いた時から予想はしていたが、本当にでかい。入り口の大きさは日本のトンネル6、7本分が綺麗に収まるぐらい。

 今回俺がガラム大洞窟に来た目的は大きく2つ。

 一つがガラム大洞窟を見てみたいというもの。そして二つ目は、行方不明になった子供を回収することだ。

 もちろん、奴隷にしたりとか非人道的な扱いはしない。

 大洞窟の前へ着地し、中へ入ろうとした時だった。洞窟内より声がしたため近場にあった木の後ろへ移動し、気配を消した。


「はぁ、まさか大洞窟の中間地点で崩壊が起てるなんてな」

「ああ、誰も予想なんてしなかったさ。しかし、冒険者協会は何考えてんだ?」

「本当だ。たかが子供3人の捜索に多数の3級冒険者を使うなんて。大洞窟の中間地点より前のエリアを捜索して見つからねぇんだから、中間地点よりさらに奥。そんなもん、子供が生きていけるわけがねぇ」

「そうだよな。洞窟の奥は最低でもクラス3、そんな魔物がうじゃうじゃいる地獄だ」

「ま、上に文句言ってもしょうがねぇ。数日後、大規模な捜索隊が編成されるらしいから、その時までにできることをしておこうや」


 大洞窟から出てきたのは、武装した4人の男性だった。

 装備している武器や防具はそこそこの性能をしているため、戦闘慣れした冒険者だとわかった。

 

〇補足情報

 冒険者が知っておくべき情報2つ

 冒険者は5級~特級まで存在している。現在、特級冒険者は世界で20人。

 魔物はクラス4~クラス1まで分けられている。神獣はクラス1に相当する。


 4人の冒険者が去ったあと、俺は洞窟の前に立つ。

 

「さて、洞窟探索始めますか」


 期待を胸に抱き、洞窟内へ足を踏み入れた。




 入口から数km進んだ地点に、広い空間があった。

 至るところに岩の山ができており、とても歩きにくい。

 

(もしかして、ここがさっきの冒険者たちが言っていた崩壊した中間地点なのか)


 中心部分まで移動してみるが、先へ進む道はどこにも見当たらない。

 おそらく崩壊の際に、通路がつぶれてしまったのだろう。

 俺は右足を上げ、地面を蹴った。

 その瞬間、洞窟内が揺れ岩の山が崩れる。


「これはこれは、運がいいな」


 岩の山が崩れた箇所にちょうど通路のようなものが見えた。

 しかし入口の半分がまだ埋まっている。そのため、右手で風魔法を構築し、岩に当てた。

 風魔法の直撃を食らった岩は弾け飛び、通路の入り口が露わになる。

 

「それにしても何か妙だな」


 奥へ続く通路を進み出した俺は、違和感を感じた。

 現在地である大洞窟の中間地点まで移動してきたが、魔物に遭遇していない。

 先ほど出てきた冒険者が洞窟内の魔物をすべて討伐したとは考えにくい。

 もしかすると、行方不明になっている子供3人と関係しているのではないのだろうか。

 違和感に着いて思考を巡らせながら進むこと約12分。

 俺は相変わらず狭い通路を進み続けていた。


(まったく、この通路どこまで続いてんだ?)


 そんなことを考えていると突然、正面から炎が巻き上がった。


「っと、火魔法か」


 一歩下がり、水魔法を使い炎を鎮火する。

 そしてすぐさま火魔法を使った人物は誰なのか特定するために探知魔法を展開した。

 すると、この先に3人の子供の魔力を検知。


(3人。行方不明になった子供だろうな…ん?それに、この洞窟のさらに奥にある反応……まさか彼女がここにきているとは)

 

 この場所に予想外の人物が来ていたことに驚きを感じつつ、通路を進む。

 とりあえず俺の最優先の目的は子供3人にある。

 狭い通路がようやく終わり開けた場所に出た。中間地点より狭いが、崩壊はしていない。中央には子供3人が立っている。

 その3人の中で先程火魔法を使ってきたと思われるのが、真ん中に立つ少女だ。

 烈火のように赤い髪と瞳、火魔法が似合う人間ランキングのトップを狙えるレベルの容姿だった。

 

「あなた強い人ね?完全に奇襲に成功したと思っていたのに」

「先程の火遊びのことか?」


 俺は謎の最強キャラモードで対応する。


「へ、へぇ…。あなた、随分言ってくれるわね。この私カティナ・フレムバーン、売られた喧嘩は買うわ」


 カティナと名乗った少女は周囲に火の球を生成する。


「トル、ニット。相手は今までの冒険者たちよりは強いから、油断せずにね」

「わかってる」

「うん」


 両サイドにいた男の子がそれぞれ左右に展開し、俺に攻撃を仕掛けてくる。

 剣の使い方はそこらの冒険者よりはしっかりしているが、騎士ほどではない。

 だから素手で剣を受け流す。


「才能はあるのだろうが若すぎる」


 素手で受け流されたことで、呆然としていた二人の男の子に回し蹴りをお見舞いする。


「ぐっ」

「ガハァッ」


 物凄く手加減をしたのだが、二人とも吹っ飛んでしまった。

 

(これ手加減ミスったらってしまうやつだ)


 内心ヒヤヒヤしている俺に対し、カティナが火魔法を放ってくる。


「ファイアボール」

「ウォーターウォール」


 水の壁を生成し、ファイアボールをすべて消滅させる。

 それを見たカティナが真剣な表情で言った。


「わたしはあなたを甘く見すぎていたみたい。ニット、トル、二人とも全力で行くわよ」

「使うんだな」

「ええ、トル頼むわね」

「もちろんだ。ニットお前にすべてかかっているぞ?」

「わかった、全力で行くよ」

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