第24話

 やがて恐れていた事態が起きた。

 しっかり100均パトロールも、ホームセンターで芝刈り機や電動ノコギリ、果ては七輪まで観察して。それなのに!

 ある日の学会の発表のような厳かな雰囲気の漂う、アパートの外の、異世界通信呼び出し。

 行かないぞぅ。

 今日はなんとなく調子が悪いもの。

 体温計も買っておかなくちゃ。

 ピンクの、さくら色のカーディガンなんて、私、桜は着ないんだから。

 その日はずっと仕事を休んで寝た。

 復帰するのが怖いなあ。みんなの機嫌が悪かったらどうしよう。しかし不思議と具合の悪い事を職場へ報告すると、元気になってしまう。

 休めるとなると、活力が湧いてしまうものなのか。それでも熱っぽい。スポドリの粉を水に溶かして飲む。スーパーの、無料の水もいいけれど、ボトルが重くて。

 なんとかやれてる自分がいる。それだけで今日は休もう。今日休むのは決定なんだし。

 不登校気味だった割には律儀だ。

 仕事はちゃんとしろ!遅刻は絶対だめだ!

 父の言葉。

 母は困ったようにいつも聞いていた。

 寝よう。寝よう。そんな日もある。明日、休んで申し訳ありませんでした、と迷惑をかけた人に謝りに行く。それが憂鬱だ。スポーツドリンク、粉のでも、たまに飲むと美味しい。

 学会の発表はまだ続いている。

 今度が最後かも知れない。

 不意にそんな気がした。

 なぜなら異世界で、異?夢で、大活躍どころか非難轟々。しかし考えてみれば訪れて、知恵を授けたのはもう何10件もある。一つ一つ思い出して、その後の後日譚の夢を語っていたらキリが無い。

 私は、意外とこの部屋を気に入っているのかも知れない。気に入った部屋。気に入ったカーディガン。そして、必要とされているのか、いないのか、誰かの、もっとこうだったらという、人生の悩み。

 助かりたかったから、助けたかった。 

 熱に浮かされて、よくわからない言葉が出てきた。


 

  

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