第15話

 中には3人の店員さんがいた。

 店長らしい立派な紳士、だがストレスなのか体質なのか、でっぷりと太っている身なりのいい男の人こちらの人の髪色は黒だった。親しみ。

 もう1人は桃色の愛らしい髪に、40代くらいの、眼鏡をかけた理知的佇まいの女性。

 最後は、まだ見習いそうな、1番若い外見の、水色の髪をした暗そうな、これまた、遺伝なのか、何かの種族なのか。耳のとんがった

 私の視線に彼女は、


いらっしゃいませ、お客様。私はウンディーネと、エルフの合いの子でございます。


辛そうに自己紹介する。

どうしよう、素敵なご家族ですね、とかいっていいのかな。

 たまに読むマンガに珍しい種族や血族が奴隷だとか、つらいのもあるし。

 なにより、初めに知らせてくるあたり、何だか陰を感じるもの。

「私は最近家を追い出されて、今はとあることを試そうとしています。そのためにこちらの鞄屋さんへ来ました」と伝えてみる。

 するとウンディーネ、エルフの子。

 種族の子は急に嬉しそうに、


そうですか、ぜひ、おちからになりたいです!


と元気に言う。

 わかるよ、境遇や環境が近いと親近感湧くよね。

でもお互い、メンタルヘルス、メンヘラって呼ばれる落ち込んで相手の気を引くみたいな、説明の難しい存在になるのは絶対に避けて見せようね。

 何を考えてるんだろう。

 一方、理知的なひとは店主の様子を伺い困り、

店主自体は。


お客様、安い鞄とは、どう言うものでしょうか?


 お店を見渡す。そして財布も持っていないこと。リュックサックが崩れいってしまったことを思い出す。

 ここにある品はすべて、きっとかなり高額だ。ルイ・ヴィトンやエルメスみたいな感じだろう。全てピカピカの皮だ。しかし。


 今回は、ここだな。

 そう確信する。

 なぜか。

「すみません、帰ります」

 お店を去ろうとすると、


〈指定された役割を果たしてください〉


 警告が鳴る。店主も店員も動揺する。


お客様、なにか、わたくしどもにかくしごとでも


 隠していることはない。ただ、帰ろうとしても店から出られない


〈指定された役割を果たしてください〉


 それが何度か繰り返され、アナウンスされる。

 私は冷静でいながらも、焦っていた。

 これもまた、魔法による取引なのか。

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