100円均一とホームセンター
明鏡止水
第1話
どうしよう。
ここに決めるしかないのかしら。
かしらなんて滅多に使わないのにわたし、桜は迷っていた。戸惑っていたといってもいい。
実家の父ととても仲が悪く、早く出ていけ!と言われるも、アルバイトで貯めた貴重なお金も使いたくない。だから、漫画喫茶やカラオケボックスなんて友達に誘われてさえ行かない私だ。車の免許も、やっぱりアルバイト代を、なんとか貯めて二十五万から三十万くらいで自力で取った。
なぜか。何も知らない私に、桜ちゃん、就職に有利だよ、と友達が教えてくれたから。
しかしその友達とももう、縁が切れている。何も言わずに進路を決めて上京してしまったらしい。ひどいとは思わない。私の家の。家庭環境、その内情を毎日のように知らされれば私だって逃げ出す。そう。大抵はいくつかの自分の居場所に逃げるのだ。それは暴露系YouTuberの配信に凸したり、彼氏の家だったり、夜の公園やファミレス、トー横だったりするのかもしれない。
それでも私は、叱られた子供が反発と憎しみ、反抗と殺意を抱きながらも、その罵声、父の調子のいい時の家庭の沈黙に依存してしまい。とうとう、ろくに専門学校や大学にも上がれないで、18歳で家を放り出されるように、一人暮らしをすることになる。これは、詳しくは言えないけれど、契約したアパートから異なる世界へと足を踏み出す、条件付きの異世界訪問記である。
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