三人の騎士
司忍
第1話 三人の騎士
馬を走らせているうちに、若き騎士はすこしづつ落ち着きを取り戻している。同時に、自分に課せられた使命の重さが、ひしひしと脳にのしかかってきた。果たして自分は、このまま馬を走らせていいのだろうが・・・・。
陽はまだ高く、空はどこまでも青々と広がっていた。風が草の上をさらさらとなでるように吹いてゆくほかには、騎士の走らせるカムのひづめの音しか聞こえなかった。
若き騎士は馬を降りると、三人を呼び集め、ついさっき王からいわれたことをそのまま話して聞かせた。
[そういうわけで、わたしは運命の地]へ行かなくちゃならない。でもその前に、どうしても君たちに会って、助言をもらっておきたかったんだ。三人の騎士たちは、友の言葉を聞くとうなずいた。
まず口を開いたのは、知性に溢れ、黄金の鷹を家紋に持つカップだった。[ボクからの助言はこうだよ。どんな困難にも、決して気持ちでは負けないで。あきらめさえしなければ、道は必ず開けていくものだから]
次に、王国で最も大柄で力が強く、行動力もあり、銀の雄牛を家紋に持つ騎士、コップが口を開いた。
[いいか。未来には必ず、試練や挫折、逆境が待っている。でも、ころんだら、同じ数だけ立ち上がるんだ。馬に乗れるようになるには、何度馬から落ちても、繰り返し練習しなくてはならないだろう?]
若き騎士は、コップのこの助言に深く感じ入り、抱謦を交わしあうと礼をいった。
最後に、もっとも感受性豊かで、黄金のライオンを家紋に持つ騎士、コールが若き騎士の前に出た。彼は騎士の心臓のあたりを指さしながら優しくこういった。
[人生にはふたつの宝物が与えられている。ひとつは時間、そしてもうひとつは選択の自由だ。時間を慎重に使い、心の命じるままに道を選ぶといい]
三人の騎士たちには別れを告げると、彼は疲れ知らずのカムにまたがり、小さなシドがいつも遊んでいる<重二羽の白鳥の湖>へと駆け出した。三人の騎士たちは、若き騎士とカムの後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。
三人の騎士 司忍 @thisisme
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