第21話 数十年ぶりの紙芝居を見る前夜に
この後、山上元保母は娘夫婦とともに一度家に戻り、改めて食事に出かけた。
大宮氏は、他の用事はなかったため、進物用の酒を持って実家に寄った。
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「実は明日、津島町の公民館で紙芝居をやります。もしよろしければ、ぜひお越しください」
山上元保母は、翌日の紙芝居の会の準備をすでに終えているという。
「そうですか。明日は夕方まで岡山におりますので、寄らせていただきます」
大宮氏が山上保母の紙芝居を見るのは、結婚前によつ葉園で森川元園長とともに保育室に赴いて以来のことである。
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「太郎にたまきちゃん、よかったら、明日、津島町の公民館の山上敬子先生の紙芝居を取材してみないか?」
大宮氏は、息子とその交際相手である二人の大学生に尋ねた。
特に二人とも用事はないようなので、そろって公民館に出向くこととなった。
息子の交際相手である海野たまき氏は、この家に下宿している。
彼女はO大学の新聞部に所属しているため、この手の取材をすることが多い。
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この日大宮哲郎氏は、久しぶりにテレビをつけた。
ちょうど土曜日の、19時。
「まんが日本昔ばなし」
このところ十年程度続いている、アニメ番組である。
別に何かが懐かしくて見ようと思ったわけではない。
そもそも、息子の太郎氏はこのアニメが放映され始めた頃には、この手のアニメを見る年齢からは「卒業」していたから、特に見ていたわけでもない。
もちろん、山上元保母の紙芝居の「予習」を意図してのことでもない。
「このアニメが紙芝居になれば、確かに、山上さんの紙芝居になるわなぁ・・・」
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