第19話 彼の求める社会性と人物像は・・・2
大宮氏が、さらに話を続ける。
私から見て大槻君の考える「社会性」というのは、先ほども述べましたようなところにありますが、それをまとめると、このように言えるでしょうか。
何はともあれ、一定以上の「性能」がなければ通用する前提を欠く。
無理をさせてまでも、あまりに飛び抜けたものを求めるつもりはないが、飛び抜けるならそれに越したことはもちろんない。
それに加えて、他者とのコミュニケーションをとるためには「感じのよさ」、言葉は難だが「愛層の良さ」も必要ではある。無論、無口な職人といった風情の人物が悪いとは言わないが、それが通用するのはあくまでも一部にすぎない。
無目的な「のびのびと元気よく」などといった前時代の子どもだましなど、排除されるもやむを得ない。
ざっと、こんなところでしょうかね。
さて、こんな考えの持ち主が、東先生はもとより森川元園長や、まして、山上先生のような人の考えそして実践してこられた人たちの手法や行事などを、これぞ輪がよつ葉園の「伝統」だからと言って、続けて行こうなどと思うでしょうか?
よい悪いの問題ではありません。
そのような人物が、そんなものを続けるわけもないでしょう。
第三者の目から見て、私は、このように考えました。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
「そうですか。大宮さんが御覧になってそれだけの意識を明らかに持っている大槻君をもってすれば、あのような「運営」は、当然なすべくしてしていると?」
元保母の疑問を、大宮氏はあっさりと認める。
「そのとおりです。これはもう、時代の流れでもあり、今の時代が必要としていることを、今いる子どもたちがきちんと対処できるよう、その術を提供していくことが彼に求められている使命なのです。しつこいが、いい悪いではありません」
「大槻さんという園長先生は、よつ葉園という場所では、「時代の申し子」とでもいう役割をなさっているととらえて、いいのでしょうか?」
今度は、元保母の娘婿氏の疑問。
「正義君のお言葉、まさに、その通りです」
「むしろ、そのような時代だからこそ、母を生かす道が、あの施設にもあったように思えるのですが・・・」
母が「追い出される」形になった娘の弁にも、大宮氏は一定の理解を示した。
「そうですね。恵美さんのおっしゃるところ、私にもよくわかります。形として、あなたのお母さんをあの職場で今も活かす道がないとは思わない。しかし、大槻さんはそれよりも先行させるべき重要案件があることを踏まえ、今のような運営をされているのです」
「なんだか、辛い現実ですね・・・」
娘の言葉に、3者とも、しばらく何も答えられなかった。
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