第2話 how to use NM.phone

スマホの電源をつけると、


『Welcome to NMS』


と表示されるとともに、画面上には”マスマネ”という名前のアプリがインストールされていた。


「なんだよ、このアプリ以外何もインストールされていないのか?アプリを入れるストアみたいのも無さそうだし」


どうやら、この”マスマネ”というアプリ以外何一つアプリは無さそうだった。


「カメラみたいのはついてるがこれはどうやって起動すんだ? カメラアプリなんて見当たらないぞ」


これ以上探っても時間の無駄だと思い、とりあえずは”マスマネ”を開いてみた。


少し時間がたつと、


『 masturbation manegementへようこそ! ここでは自分の記録を見たり特典の発注をしたりすることができます。まずはNM.watchとのペアリングを行ってください。』


「ペアリングをしなきゃいけないのか。どれどれ。」


右手に取り付けたスマートウォッチの電源を起動する。


すると真っ先に


『NM.phone user.Tojima とのペアリングを行いますか?』


と表示される。 他に操作は出来無さそうであったので”はい”を選択した。


数秒間待っていると通知音のような音が鳴り、ペアリングが成功したようだった。


「おっ、きたきた」



まずは機能の確認のためにアプリをいろいろと操作してみる。


下には"record"、"market"、"camera"、"mission、と四つのボタンが表示されていた。


「おっ、カメラあんじゃん」


パット見は普通のカメラと何一つ変わらなかったがどうやら種類があるようだった。

”registration” ”vision” ”favorability rating"の三つがある。


英語弱者な俺は何を言ってるかわからなかったので、あと回しにすることにした。


”record"のボタンを押してみるとそこには禁欲日数、血圧、脈拍、したいこと、精神状態、アドバイスなどという欄があり、自分の体のいろんな値や状態を見ることができるようだった。


「今の自分のしたいことなんて見れるのか、、、?今は、、、っと」


『遠島 泰斗 さんのしたいことは〔宮下 夏目を彼女にすること〕』



「なんでだよ、なんでそんなことまでわかるんだよ//」


こんな俺にも夢がある。クラスのマドンナである宮下 夏目を自分のものにしたいというものだ。黒髪ロングで前髪がぱっつんとしているその姿はとても可愛らしいとともに透き通るような透明感も同時にある。自分からしたら天と地の差ぐらいあるが、誰かを好きになるくらい自由だろ。 なぜ好きかというとズバリ俺の推し、雫沢ミコちゃんに激似だからだ。



どういう仕組みなのかはさっぱりわからないが、この機器に多少の恐怖と感動を覚えた。まったく時代も進歩したものだな(?)


下にスクロールしていくと少し興味の惹かれる欄があった。


『登録人物の状態?自分のはもう書かれているじゃないか」


ボタンをタップすると先ほどの健康状態などが映し出される画面が出て


『登録人物がいません。”camera"機能にて新しい人物を登録してください。」


なんだこれは、、、。もしかして他人の情報まで把握することができるのか?

どういう仕組みで?たったのカメラひとつで?


面倒くさいとは思いながらもさっきのカメラの機能の英語を翻訳してみると


”登録” ”洞察” ”好感度” という三つの機能があることが分かった。


なんなんだこのスマートフォン。意味不明なところが多すぎる。


よくは分からないが、誰かで試してみたい。そんなことを思っていると丁度いいタイミングで妹が帰ってきた。


そうだ、妹で試してみよう。


「おかえり琴音ことね。今日の部活も疲れたろ。ところで写真を撮らせてくれ。」


「急に何キモいんだけどマジ無理どっかいけよ」


「やっぱりか。ごめん何でもないよ。」


「疲れてるのわかってるんだったら話しかけないで」


そんなセリフを吐きつけて、琴音はリビング向かおうとし自分に背を向けた。


今だ。


registration のボタンを押し、妹をカメラにとらえる。


パシャッ。


「は?今写真撮ったよね?無理って聞こえなかったの?そんなのも分からないの?」


「あ、新しいスマホを買ったから自撮りでカメラを試したんだよ。」


「きっしょ」


何とか苦し紛れで誤魔化せたが心に深い傷を負った気がする。こんなの日常茶飯事だが慣れないもんだな。


まあこの容姿で自撮りをしている姿を見せつけられるのも一種の拷問ともいえるだろう。琴音の反応はごく普通のリアクションだと思われる。


ともかく、妹の写真は撮れた。部屋に戻って確認するとするか。


泰斗は落胆した心を静めながらも二階へと向かう。


「さて、見てみるとするか。 おっ、本当にデータが見れるじゃないか!」


すごい、ほんとに見れてしまう。


アイツ今どんなこと考えてるんだろ。


『遠島 琴音 さんの精神状態〔兄に対する強烈なストレス。部活動での疲れに重なって非常にイライラしている状態〕』


まあそうだよな。兄のことが大好きなブラコンの妹なんて二次元にしか存在しないということは周知の事実である。


他にもデータを見ていると、自分の”record”にはなかった欄が小さく記載されていた。


「"NMR"?なんだこりゃ」


その横に小さく米印で


『※NMRとは?』 と書かれていたのでタップしてみた。


『※ NMR:no masturbation record の略。登録した人物のマスターベーションの禁止日数がわかります』


そんなのも分かんの??????


そして値を見てみると何と値は0になっていた。 さっきからやけにリビングからの物音が聞こえないと思っていたが、そういうことなのだろうか。


これ以上は深く考えないことにした。妹のためだ。 



今気づいたが、現時点では一人の人間しか登録できないらしい。更に解放するにはポイントが必要なようだ。


兎にも角にも、このシステムが本当に使えるがほぼハッキリした。


書かれていることが本当なのかという事実が確証されているというわけではないが、さっきの琴音の精神状態のデータから考えれば恐らく合っているだろう。


さて、明日は金曜日だ。明日学校に行ってしまえばやっと休暇がやってくる。









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