隙なし妻と隙だらけ夫

リール

第1話 夫婦

僕たち夫婦の出会いはドラマのような運命的なものではなかった。

一時期流行を見せていた街コンと呼ばれる大人数での合コンが初対面であった。

後に妻となるコハルは参加者の中でも一際可愛く、話すととにかくドキドキした。

恋愛経験が少なく、中学生レベルの恋愛スキルしかない僕はなぜか興味がないフリをしてしまった。

参加した女性の中でダントツで可愛いその子に男は群がった。そのテーブルで唯一興味ないそぶりをみせた僕に、これまたなぜかコハルは惹かれたらしい。

「そうくんだけ知らんぷりしてて逆に気になって目で追っちゃったんだよ」と彼女は後に言っていた。

友達に付き合って参加した彼女は男性との連絡先交換のタイミングで逃げるようにドリンク受付に行った。群がっていた男性は連絡先交換のタイミングを逃していた。

その時それまで素直に行動できいなかった僕に、なぜか勇気の使者が舞い降りた。

彼女を追いかけ「こはるちゃんだよね?LINE交換しても良い?」と勇気を振り絞り声をかけた。

満面の笑みで「いいよ!私も交換したかった」と返事をする彼女とLINEを交換した。


そんな出会いから連絡を続け、数回のデートの後に交際がスタートした。


カップルにありがちな喧嘩をしながらも、ラブラブな期間は続き、2年の交際期間を経て私たちは同棲を始めた。同棲から数ヶ月たち11月22日に僕たちは夫婦になった。


私たち夫婦は間違いなく仲は良い。自他共に認めるほどラブラブである。ただ、喧嘩の数が人一倍多いのは事実だ。同棲、結婚を通してコハルの強さ、自分の不甲斐なさを実感していったのだ。

ここでは、隙がない妻であるコハルと夫婦喧嘩全敗の隙だらけ夫である僕の少し特別で誰にでも起こり得る夫婦生活奮闘記を綴っていく。


僕たち夫婦について少し特徴を話しておこう。


妻は嘘が大嫌いで、自分の気持ちに正直に行動するタイプだ。僕に向ける思いもまっすぐで僕はその性格に惚れて結婚を決めた。一方で向ける思いがまっすぐであるが故に、愛情表現も多く、その分相手にも求めることが多い。一般的な女性がどうかわからないが比較的嫉妬はする方に感じる。

八方美人とは真逆の性格で自分の好きな人とのみ深く関わり信頼関係を築いていく。

また、かなり細かいことにも気づき、普段の生活での節約や、効率的な時間の使い方はもちろん、将来設計等あるゆることに抜け目がない。周りを見渡してもこれほどしっかりしている妻はいないのではないだろうか。


一方僕は、取り柄といえば仕事に真面目であり、人と犬に優しいことくらいであろうか。人と接することが好きで、人との繋がりが重要となる理学療法士という仕事をしている。

人と揉めずに過ごしていきたいという願望がつよく、常に周りに気を配るタイプではあるが、妻への気配りは不足しがちである。

欠点についてはここでは記せきれないほど多いが、後に記載する夫婦喧嘩の数々の中で露わになっていくだろう。


これほど真逆の2人が四苦八苦しながらお互いのため生きる様を夫婦の記録から感じてほしい。そして様々な夫婦の形がありそれぞれの答えがあることを理解してほしい。


夫婦の話をするうえの大前提として、私は妻を愛している。妻も私を愛していることは分かっている。それでも喧嘩は起こり、何度でも夫婦の前に壁は出現するのだ。

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