オフ・ザ・レコード
ゴウン……ゴウン……ゴウン……
エレベーターが動く音が響く。ドンドンと下に降りるエレベーターの内部には、二人の人物が居た。1人はカボチャの被り物をした者、もう1人は上着を羽織った男だった。カボチャ頭は、上着の人物に話しかけた。
「先輩、お疲れ様でした!!!」
「あぁ。」
「今回も盛況で、なかなかの収益が上がりそうです!!」
「そうか。」
「閲覧数による広告収入と、賭け金の手数料が大半ですね!!」
「コメントは?」
「はい、多く寄せられてます!」
「不信感や疑念は?」
「無いですね!来た場合、削除しましょうか?」
「いや、いい。」
ゴウン……ゴウン……チィーン――
エレベーターが止まり、扉が開く。そこには大きな作業部屋があり、何人かが作業していた。出てきた二人に頭を下げると、作業に戻る。先輩と呼ばれた人物は、衣服を整理している人間に上着を渡した。上着の内側に
「そちら、今回の一連の放送のデータです!」
「あとで、目を通す。」
「そういえば、怪我とか無いですか?」
「大丈夫だ。暴行は想定済。」
「流石です!」
先輩は腕を組むと、カボチャ頭に質問した。
「いくつか、確認したいんだが、いいか?」
「はい、なんでしょう!」
「ボタンは、ランダムか?」
「えーと、はい、そうです!」
「そうか。」
「気になる事でも?」
「偏りが有ったように感じたが、たまたまなら良い。」
「はい。」
「メンバー選定は、誰が担当だ?」
「自分です!」
「甘いぞ。」
「えっ!?」
「上光と北条、もともと知り合いのようだった。」
「えーと。別々に参加させる予定でしたが、参加者が足らず仕方なく。」
「最初から手を組ませるな!手を組む過程や取引も、盛り上がりのひとつだぞ!」
「すいませんでした!!!」
「盛り下がるから、気をつけろ。」
「以後、注意します。」
カボチャ頭は、先輩に頭を下げる。先輩は、構わず話を続ける。
「挑戦者が出た後のゲームマスター、録画で淡々と進行するのは良かったぞ。」
「ありがとうございます!」
「ただし、最後のコメントは分けろ。参加者の叫び声で聞こえない可能性と、叫び後を楽しみにしてる視聴者の邪魔だ。」
「気をつけます!編集で後付けにしようと思います。」
「そうしろ。」
「了解です!」
「あと、次の参加者は、どうだ?」
「老若男女、揃えてます。」
「そうか。」
「ただ性格分析的に、敵対や独善、凶悪性は低いようです。」
「分かった。運営から凶暴な演技が出来る奴を、入れろ。」
「はい!」
「柔軟な演技が出来る者も増やせ。あと、運営側が挑戦した場合の血のり弾薬装填銃の整備もしておけ。」
「両方とも、進行しております!」
「分かった。以上だ、下がれ。」
「失礼します!!!」
カボチャ頭は、礼をすると部屋から出た。1人残った先輩は、デスクの資料を確認した。誰がいつまで生存していたのか、ゲーム開始から死ぬまでの間にあった視聴数の変化やギャンブルの賭け金などが記されていた。男性陣の生存への賭け金が多く、女性陣の死亡シーンの閲覧数の急上昇が見てとれた。死亡した順に並ぶ資料をめくりながら、数字を確認した。それぞれのページに赤ペンで、おかしな所に二重線を引いたり、気になる事を書き込む。最後のページにたどり着いた。氏名欄に[犬音]と書かれた自分の顔が、目に止まる。プロフィールを添削し、不自然な所に二重線とコメントを残す。
《名前、もっと工夫しろ。》
《記憶喪失は、無理がある。直前の記憶までにしろ。》
《最後の勝ち方が、不自然で怪しまれていないか調査しておけ。》
もと犬音は、資料を見直していると、部屋にコンコンッとノック音が響く。
「どうぞ。」
「失礼します。」
カボチャ頭が再び、部屋に入る。
「資料のチェックは終わってる。」
「では、回収して周知反映します。」
「よろしく。」
「ついでに、こちら次の参加者のリストです。」
「目を通しておく。」
「失礼します!」
「ご苦労。」
カボチャ頭は一礼すると、部屋を後にした。もと犬音は、置かれたファイルに目を通す。表紙には、【小説投稿サイト登録者】と書かれていた。ペラペラとめくり、参加者に相応しい者を探す。めぼしい人物にチェックを付けて、身辺調査をさせる。調査結果が出次第、招待状を送る。その招待状に乗ってきた者を、死のゲームに参加させる。隠しカメラで全貌を世界中の物好き達に、見せ物にする。こうして生まれた莫大な財産で、今日も今日とて運営は動き出す。自己暗示も込めつつ、徹底的に周知する。
…………
盛り上げろ!
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盛り上げろ!!
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盛り上げろ!!!
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盛り上げろ!!!!!!
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