約84%の死@ローリングリボルバー
1輝
#1【デスゲーム】約84%の死
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盛り上げろ!
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盛り上げろ!!
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盛り上げろ!!!
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盛り上げろ!!!!!!
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意識が朦朧としている。悪い寝起きと、半分以上の頭が寝ている様な感覚だ。このままいれば寝られそうな気分だが、周りの騒音で阻まれる。音である事しか分からない状態から、徐々に物音と声に分離してきた。物音は金属のぶつかる音に、声は怒声や罵声、悲鳴に変わっていった。
「ナンヤコレ、サッサトハズサンカイ!」
「もー、最悪なんですけどー」
「ヒィッ、なんなの……」
「五月蝿いのぉ。落ち着かんかいぃ。」
「私は大丈夫。私は大丈夫。私は大丈夫。」
周りからは老若男女の声がする。どの声にも、聞き覚えがない。頭がボーッとしているからでは無く、初めて聞こえる声だった。徐々に意識が回復し、周りの景色も見え出した。
両手には手錠。白い壁に白い床、白い天井。床の真ん中には大きな丸い溝が有り、丸を半分にする様に線が一本入っていた。その丸を囲うように椅子が6個と、十字架が1つだけだった。
自分の両隣と真向かいが女性で、隣と向かいの女性が挟む形で、それぞれ男性が座っていた。向かいの女性と左隣の男性の間に、白くて太い十字架が置いてあった。自分を含めた全員が椅子に座らされ、縛られていた。その為に口々に文句や不満などが、垂れ流されていた。
自分の意識が戻ったことに、右隣の女性が気づいて声をかけてきた。
「大丈夫ですか?」
「えっ、えぇ……」
若い女性で、学校の制服のような物を着ていた。他の人たちも年代も見た目もバラバラで、統一感が無かった。
「ココは?」
「分からないんです。目が覚めたら、座らされていて、縛られていて。」
「誘拐……ですかね?」
「それは……、違うと思います。みんな、志願とか……志望して……来てるはずなんです。」
「えっ?」
その言葉に驚いた。変な部屋に眠らされて入れられ、縛られて座らされる事を望むなんて有り得ないと思ったからだ。
「あなたは違うんですか?」
「たぶん……」
「???」
「…………」
必死で思い出そうとするも、何も出てこない。目が覚める前の事、何故ここに居るのか、どういう経緯なのか、そもそも自分の存在から思い出そうとしても、出てこない。
「思い……出せない…………」
「直前の記憶がですか?」
「いや…………何も………………」
「!!!」
彼女が驚いていると、どこからか声が聞こえてきた。質の悪いスピーカーを使っているのか、音質は最悪だった。
《皆様、お目覚めでしょうか?》
ガビガビの声と共に、天井からモニターが降りてくる。モニターというには古く、ブラウン管テレビが椅子の前にそれぞれ配置された。それに映っていたのは画質の悪い、カボチャ頭の顔だった。各々が口々に喋るものの画面のカボチャ頭は、無視するように話を続けた。
《では、ゲームの説明を始めます。》
《今回のゲームは、[ローリングリボルバー]です。》
そう言うと照明が落とされ、真っ暗な部屋の中央の丸が開いて、ゆっくりと下から何かが迫り上がってきた。徐々に姿を表して、止まった。全体像はシンプルで、
《5・4・3》
カウントダウンが始まると、カチカチカチと銃の弾の入っている部分が高速で回転し、ギギギと重い何かを引く音がする。椅子に座る全員が、男を見つめる。というより、目が離せなかった。
《2・1・0》
その瞬間、ズドンという音と共に銃が震えた。そして、磔にされていた男の眉間に穴が空き、後ろの白い壁が真っ赤になるほどの血が飛び散った。
「キャーーー!」
「…………ッッッ」
「ナンヤコレ。」
様々な声と共に、見つめる者や目を逸らす者、呆気に取られる者が居た。銃口から煙を漂わせる銃と、死体の縛ってある十字架は、ゆっくりと下に沈んでいった。カチカチカチと銃の弾の入っている部分は高速で回転し、完全に沈むと床は閉まった。そして、綺麗にされた十字架だけが、再び迫り上がってきた。何も無かったかのように、綺麗な白色だが、明らかに血痕や小さな肉片が付着していた。
《皆様にも、同じ様に、縛られて撃たれていただきます。》
《ただし、六箇所のうち一箇所だけには弾が入っておりません。》
《そこを狙って挑戦していただきます。》
《弾の入っている部分、弾倉と言うパーツは引き金が引かれるたびに回転します。》
《銃口側から見て反時計回り、引き金側から見て時計回りに、弾倉は回転します。》
《順番は自由。挑戦したい方は、十字架に乗り込んで下さい。》
《弾が発射された場合、その箇所には再装填が行われますので御注意を。》
「ンナコトデキルカー!」
「ヒッ、無理でしょ。」
「えー、分かるワケないじゃんー」
他の参加者から不満の声が出る。当然だが、6分の5で死ぬ。リスクが大きすぎて、参加する意味が無い。
《無事に生き延びられた方には、賞金が御座います。》
この言葉に、ほとんどの者が反応した。口を閉じ、耳を傾ける。
《賞金は、3億円を成功者で割った数となります。》
おそらく、二人なら1億5千万、三人なら1億……なのだろう。
《ただし、成功者が1名様の場合には、特別に賞金を増額して、30億円の総取りとなります。》
「ナニ!」
「ヒッ。」
「とんでもないぃ、額じゃのぉ。」
どう考えても、他者を切り捨てる方が金額は高い。しかし、そんな事が出来るのか。間接的に、人を殺さねばならない。
《最後に、皆様には卸部屋用意してあります。》
《いま座っている椅子の後ろが、それぞれの個室となっています。》
《鍵は部屋の中に有りますので、ご自由にお使い下さい。》
それぞれの椅子の後ろが、プシューと音を立てて上に昇った。自分の後ろは見えないが、他の参加者の後方は見える為、どうなっているか確認する事が出来た。小さな廊下と自動ドアが見え、他も同じようだった。
《鍵は、ゲームのアイテムも兼任しておりますので、ご注意を。》
《では、ゲーム開始です!》
カボチャ頭が叫ぶと、画面は消えた。ブラウン管テレビたちは上へと持ち上げられ、天井は閉じられ元に戻る。部屋の明るさが戻ると同時に、縛っていた手錠も解除された。全員が各自の部屋に急いで、駆け込む。ゲームのアイテムが今後の命運を左右するのは、間違いなかったからだ。
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