第5話 化身ラマ

 「そこでリンポチェという役割が重要になるのだ。」


 「リンポチェ? 高僧の事だよな? ヤムリもシャマル•リンポチェになったって聞いたけど……。その役割……っていうのはなんなんだ?」


 「うむ、リンポチェとはな、化身ラマとも言われている。シャマルは阿弥陀如来だな。随分と昔から輪廻転生しているのだ。私がシャマルだと認識できたのは三年前だがな。」


 なんだと?!

 今ヤムリが言ったこと、頭の中で理解しようと試みてみる。

 輪廻転生?!

 それってあれだよな?

 記憶を残したまま生まれ変わるみたいな……。

 そんな小説を何冊か読んだことはあるが……。


 チベットではそんな昔からあったのか?!


 確かにチベットの死生観は輪廻転生とかだったけど、記憶なんて残ってないものだと思ってたぞ!

 今世でいいことをしたり、徳を積んだら来世は幸せに生きれる、とかそんなイメージで考えてた。


 「なんか思い違いをしているようだな。前シャマルの記憶があるとかではないぞ? もしそうなら地球ができてからずーっと記憶がある事になる。まぁ、記憶を引き継いでいるという事例も少なからずあるようだが……。私にはないよ、前シャマルの記憶は。」


 「ん? ならなんでシャマルだって認識できたんだ? 記憶が戻ったとかじゃなきゃ認識できないだろ?」


 はぁ、っとため息を吐き、お茶を少し飲んでからまた語り始める。


 「それなんだよ、ヤクル。お前も関係してくるのは。」




 それ?

 どこ?

 俺が?



 「よく理解できてないよな。それは当たり前だよ、ヤクル。私たちの修行内容を話すよ。あまり部外者には伝えたくないのだが、もう部外者ではないからな、ヤクルは。」


 「部外者じゃない? どうしてだ? 俺は日本人だぞ? チベットに生きていない、ただの一般的な日本人だ。」


 「そうだな、確かにそうだ。しかしヤクル、お前はもう日本に帰る気がない。そうだろう?」


 「……」


 「大丈夫だ。こちらもそのつもりで受け入れている。共に今世を生きよう、ヤクル。」


 「……。ありがとう、ヤムリ……。確かにそのつもりなんだよ、俺。俺にはチベットしかないってさ、なんだかそう思えて……。無我夢中でここまでやってきたんだ。受け入れてくれるならこのままここでヤムリと生きたい。」


 「ああ、当たり前だ。ヤクルのことはナディ様、神様からお願いされているからな。こちらとしても嬉しい限りだよ、ヤクル。」






 ……またぶち込んできやがったよ、ヤムリのやつ……。

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