第3話 話の前に……
「凄いな……。前回来た時にもちろん外からは見ていたけど、まさか中に入る事になるとはなぁ。これもヤムリ様様って事だな! 」
ポタラ宮殿に入り、色々と、風呂や食事を用意してもらっている間、ヤムリとチグル、さっきの若い僧侶だな、の3人で雑談していた。
「ヤクルさん、今はシャマル•リンポチェなんですよ? ヤムリさんは。仲がいいっていっても少しは敬っていただきたいですが……。」
チグルにチクっと言われる。
確かに僧侶からしたら高僧のお偉いさんだものなぁ。
しかし、俺としてはヤムリが変わったようには見えないんだよな。
まぁ、昔からなんか凄い感をだしていたからかな。
「チグル。ヤクルはいいのだ。またお前にも伝えるが、ヤクルは私にとって特別なのだよ。だからヤクルよ。私のことは昔と同じ、ヤムリと呼んでくれていいからな。」
「悪いな。それの方が助かるよ。しかし、さっきもそうだけど俺がなんなんだ? 昔1日だけ話しただけだろ? 自分で言うのも寂しいが、たいしたことない人間だよ? 俺は。」
「そうだな。それには理由があるが……。私の方が慌てているな。少し落ち着こう。ちょうど湯もできたようだ。先に浴びてきてくれ。その後食事でもしながら話をしよう。」
「なんだか凄く気になるんだが……。まぁせっかくだしな! 旅の汚れを落とさせてもらうよ。ありがとうな。ヤムリ。」
そうヤムリに伝えて湯をいただきに行く。
あまり豪華ではないが清潔に保ってある風呂だ。
あまり長湯も良くないと思いつつも満喫させてもらった。
「悪いな、あまりに気持ちよくてついつい長湯してしまったよ。お! チベットではあまり見ないご馳走だな! いいのか? 質素堅実がもっとうなんじゃないのか?」
風呂から上がって二人の元に来ると、机の上には野菜料理だけだがかなりの品数が用意されていた。
前回は小麦を水で解き、少し焼いただけのパンもどきのようなものと少しの塩スープとかしか食べなかった気がしたんだが。
「ふふふ。今日だけ特別だよ。もちろん普段は質素堅実を心がけてはいるがね。今日は待ちに待ったヤクルが来てくれた日だからね。国賓並みの料理をお願いしたんだ。さぁ、せっかくだから遠慮なしに食べようじゃないか。」
「お、おう……。国賓か……。なんだかよく分からないがいただくよ! ありがとう、ヤムリ! ……チグルはたべないのか?」
席につかずヤムリの後ろに立っているチグル。
みんなで食べた方が美味しいだろうから一緒に食べたいんだがなぁ。
「ヤクルさん。僕はもういただいてます。話を一緒に聞くように言われているのでここにはいますが、お気になさらぬよう。リンポチェと二人お召し上がりください。」
「あ、そう? じゃあ遠慮なく。ヤムリ、食べながらでも教えてくれよ? この待遇の理由を。」
「ああ、もちろんだとも。私にとって、いや、ヤクルにとっても大事なことだからな。まぁまずはいただくとしよう。」
ここから今世、俺の生き方を決める大事な話が始まる。
おおごとな話が……。
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