1.日常

 ――また、仲間が死んだ。


 ボロボロの鎧を着込み、ダンジョンに潜って魔物を倒し戦利品や宝物、鉱石を採って帰る。


 命懸けの探索が毎日続く。人死なんて当たり前、今日は1人だけだからましな方だ。減った分はどこからか連れて来られる。ここに来るのは大体子供。孤児か人攫いにあった者、世間では居ないことになっている存在だ。


 ここに来るとまず頭に魔石を2個埋め込まれる。魔石には服従の魔法が込められていて管理者に逆らえなくなる。そして1年の雑用後、腕に2個、更に1年後に足に2個。合計6個の魔石を埋め込むことでやっとダンジョン探索者になれる。少なくても3年もかかるので子供が連れて来られるのだろう。


 6個の魔石があれば魔鎧と呼ばれる魔力が込められた鎧を着ることが出来る。魔鎧の力があればどんな凡人でも魔物と戦うことが出来る。鎧によっては騎士や魔法士と戦うことだって出来るのだ。


 騎士や魔法士は選ばれた者達だ。才能を持って生まれて幼少から訓練をすることでなることが出来る。強力な肉体に優れた術、更には強化された武具を装備して戦う者達。金と地位の有るところに生まれた、選民。


 強力な鎧を着るためには更に魔石を埋め込む必要がある。ここでは魔石の埋め込まれた回数を強化値と呼んでいる。6個の魔石では強化値Lv.3。貧弱な魔鎧しか着ることが出来ない。ここで生き残るためには最低強化値Lv.5は必要だ。


 ――だが、石を埋め込むだけで誰でも強くなれる。そんな美味い話はこの世界には無い。魔石を埋める度に激痛が走り、数が増えるごとにそれが大きくなる。Lv.5になる為の術式で発狂死した者だって少なくない。

 つまり、ダンジョンで生き残るためには強化値を上げる必要が有り、上げる為には命懸けの術式を受ける必要がある。


 命はなんて儚いのだろう。


 どこからか連れて来られて、管理者にジャンと名付けられた俺は9回術式を受けた。いや、受けさせられた。

 結果、このダンジョン探索者の中で唯一の強化値Lv.9だ。ここにある魔鎧はLv.7あれば着ることが出来る。つまりそんなに高い必要は、ない。

 だが、魔石の力で常人よりはましな身体にはなっているようだ。実力でダンジョンに潜る初心者位の力はあるだろうか。


 身体が丈夫なら強い鎧を着る必要はない。魔鎧は貴重だ。所詮、身寄りの無いダンジョン探索者に与えられる物などたかが知れている。傷んだLv.5用魔鎧を着込みダンジョンへ潜る。


 


 ――今日は誰も、死にませんように。



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魔血のロンリネス YA-かん @yakan9696

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