第28話




「わぁ~~!!きれい!!」


 慣れない高級感に借りてきた猫のように大人しくしていたが、部屋に入ってから見える夜景に思わず声を上げた。すごいすごい、と騒いでいる私の隣に、雅也さんも立ち、暫く二人で夜景を楽しむ。



「はぁ~、何だか全然見飽きないですね。」


 窓に齧りつくように、没頭している私に、雅也さんが苦笑しながら声を掛けた。



「瑞樹、ちょっとだけこっち見て。」


「え・・・?」


 雅也さんの方へ顔を向けると、手を取られ、そして。



「これ・・・。」


 左手の薬指に付けられた、シンプルなデザインの指輪。少しずつ、状況を理解していくと、鼓動が早くなるのを感じる。手を引かれ、後ろから抱き締められる。



「あの時、一緒に住みたいあまり、ちゃんとプロポーズもしなくてごめん。」


「い、いえ。あの時も、嬉しかったんですよ?」


 耳元で囁かれると、どんどん身体中が熱くなる。すぐ傍に、雅也さんの顔があるのに、見ることはできなくて、俯いてしまう。



「・・・瑞樹。俺は話も上手くないし、苦労をかけてしまうと思うけど・・・だけど一緒にいるのは瑞樹以外、考えられないんだ。」


「・・・雅也さん。」


「結婚しよう。」


 私はもう、言葉にならなくて。大きく何度も頷いて。そしたら、ぎゅうぎゅうに抱き締められて。幸せすぎるのが怖くて、つい頬を引っ張っているとその手を取られ、顔が近づき唇が重なる。




 雅也さんが、顔が怖くて、表情が乏しくて、言葉が少ないのは、変わらないけれど。


 私が、後ろ向きで、変に突っ走っちゃうのも、変わらないけれど。




 それでも、二人でいられたら、きっと幸せなのだと、私は確信している。




 《おしまい》



 明日一話、おまけ話を投稿しますのでぜひ!

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