夏はあなたに会えるから

夏はあなたに会えるから



「あっつい………」


ぐでっと、障子に寄りかかりながら、美鈴は言う。

誰もいない縁側で、彼女は風鈴の音を聞きながらアイスをかじっていた。

じーわ、じーわ、と蝉が鳴いている。


「美鈴は暑いの嫌いだもんね」


___ちりん。

風鈴を鳴らして、僕は彼女の隣に腰掛けた。


「おかえり、和真さん。」


「ただいま」


暑い縁側で、二人並ぶ。


「部屋の中の方が涼しいんじゃないの?」

と僕が言えば、


「和真さん、風鈴好きでしょう?」

と彼女は言う。


シャクシャクと、美鈴はアイスを食べ進めていった。


「ねぇ、そっちってやっぱり忙しい?」


「そこまで忙しくないよ、美鈴の写真、よく見てるんだ。」


彼女は薄らと頬を赤らめた。

「よくここで、アイス並んで食べたよね」


ちりんと、もう一度風鈴を鳴らした。

「そうだね。美鈴は、何だっけ、がりがり君?」


「和真さんは、カップアイスが好きだったなぁ………」


ちりん、ちりん……

「今だって好きだよ」


「あら、今も好き?」

美鈴はくすくす笑った。


「ねえ私、いつごろそっちに行くのかしら」


「まだまだ、待ってて、」


彼女はムッとしたような顔をする。

「もしかして、浮気なんてしてないでしょうね」


「そんな訳ないだろ、僕には美鈴一人さ」

何度も風鈴を手で遊び、鳴らしながら、僕は抗議した。


「そっちにどんなに綺麗な人がいても、待っていてよ」


「美鈴は待ってなくてもいいんだよ」


彼女は寂しそうな顔をする。

「私には、あなたしか見えないんだから」


「僕を忘れたっていいんだ」

彼女が僕の方を見た。


「ねえ、帰ってきてるのよね?」


「あぁ、帰って来てるよ」


「風鈴好きだもの、さっきから鳴らしてくれてるのよね」


「うん、君のために。僕が来たって、わかるでしょ。」


「暑いのは嫌いよ、けど、夏はもう嫌いじゃないの。だって____」



お盆“なつ”には、あなた帰ってくるでしょう?」


あぁ、帰って来ているよ。


夏は君に会いたいから


毎年帰って来たいんだ。

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