第21話 準備と賭け【ニコ視点】
「インジェンはそのリームスタワーで何をしようとしているの? どうしたらわたし達の勝ちなの?」
この、ルミナからの問い掛けは当然だ。これからの指針を明確にする。
「タワーにある国一番の大型タンクを破壊して、都市を
研究所の地下に、プールがあった。案内された。
勿論、
「
「どうして『今』居るって分かるの?」
「クーデターは『電光石火』が基本なのよ。基本的に武力は国が上なんだから。タンクを破壊するとしても、時間が経てば経つほど対策できるでしょう? タンク狙いなのは誰でも分かるもの」
「そうなの?」
「……後で移動中に教えるわ。つまり、私も電光石火よ。
「インジェンを捕まえるの? きっと
アサギリ氏の研究資料に、今私が知りたいことを見付けた。さっき地下泥路で、ルミナがやったことだ。
「試すわよ。今。ルミナ、プールへ入りなさい。ぱっと思い付いた、24個くらいパパっと試すわ。それで、作戦を考える」
「えっ。うん。分かった」
私達の策の中心も、ルミナのこの能力だ。これを使って、インジェンをタワーに留まらせる。逃さないように。
「……空にしたタンクに閉じ込めるのが一番ね。あそこには……クレーンが何台かある。エレベーターの位置は……」
イストリアは。
アサギリ一族から研究を奪った。そして、人間に隠れて秘密裏に研究を続けていた。その集大成が、インジェンだ。
捨てられたルミナよりも、その能力や性質は上の筈。
「紙」
「うん。白紙なら」
「ハサミ」
「……ちょっと無理かも。出たけど形が違う」
「もう一度。ハサミ」
「あれっ。できた! なんで?」
「…………なるほど。コピーではないのね。新たに作ることもできない。一度溶けた物でないと『復元(?)』できない。この
いくつか試す。その規則性や、限界値を探る。もこもこと、ルミナが私の指示に従い、
「お嬢様。工場から光泥車が到着しました」
「分かったわ」
時間が無い。
「運転手より、旦那様からのご伝言があります」
「ええ。読むわ。それと、タワー管理室とも連絡を取ってくれる? あとウチの建設部門。これとこれ、用意してって」
「かしこまりました」
チルダも忙しなく動いてくれている。父からの伝言はメモ用紙として渡してくれた。私も、彼らへの要求を書いたメモを渡す。
続いて、アサギリ氏へ顔を向ける。
「アサギリ博士」
「なんだい」
「
「人間と姿を別けた意図としては、外見で分かりやすく判断できるように、と言われている。獣の感覚器官と融合させたのは、
「…………なるほど。完全に納得できるわね」
【真実は意外としょうもない】。
いや。
ここへ来て良かった。無策じゃ絶対に負けていた。
ルミナが居て、良かった。
「えぇ……。わたしの耳、大昔の誰かの趣味だったんだ……」
「微妙なショックを受けている暇は無いわルミナ。とても良い趣味だし。次。これ行くわよ。触って、形をよく確かめてから、溶かしなさい」
「…………! うん。うん?」
その、実験を数度終えて。
「……ねえルミナ。思い付いたわ」
「…………わたしも。だけどこれ、駄目だよ」
「いいえ。考えることは同じね? なら」
「ニコ待って」
縁に足を掛けて、よく見る。
「…………これが成功すれば、確実に隙を突ける。
「駄目だよニコ。そんなの。もっと別の方法ある筈だよ」
「そうね。でも、ルミナ。……賭けよ」
「…………」
チルダは今、研究所の表でウチの社員と父との連携について確認している。この場に居れば、絶対に止められるだろう。
今。やるしかない。
「ちゃんと、『復元』してね? ルミナ」
「…………!」
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