「勉強を教えて!」と言ってくる妹の友達がかわいい

すずまち

第一章 妹の友達→後輩

イントロダクション

ある日の平穏な日常


「先輩。今日私達と一緒に出かけてくれるって本当ですか?」

「ああ。その予定だけど。ひまりに聞いたのか?」


 そろそろ準備しないといけないかなあ、と思い、自室からリビングに降りると、目をきらきら輝かせ、全身から楽しみそうなオーラを振りまいている咲ちゃんがいた。

 なんだかんだもう出かけるのは何度めかになるが、未だにこの状況には慣れない。


「あ、お兄ちゃん。準備しに降りてきたの?」


 既に殆どの準備を済ませてしまっているひまりが洗面所から出てくる。その髪にはクローバーのヘアピンが留められている。

 ちら、と咲ちゃんの方を見ると、咲ちゃんの髪にはシロツメクサのヘアピンがあった。


 なんだか一気に口元が崩れてきて、急いで階段を駆け上がる。


「そんなに急がなくても、私達待ってるから大丈夫だよ!」

「ああ!すまんな!」


 上から喜色がにじみ出ないように、少し大袈裟に返事をする。自室に入り、適当な服を見繕う。これは駄目とか、これなら良さそうとか。

 下にいる二人はおしゃれさんだ。下手な服だといけない。ここは簡単にシンプルな服装で行くか、少し固めな服装で行くか……そう悩む時間も少し楽しく感じたりする。


 着替え終わり、リビングに戻る。ひまりと咲ちゃんは二人で仲良くソファーに並んでゲームで遊んでいた。入ってきた音で気がついたのか、二人共こっちを向く。


「うん。いいね、お兄ちゃん。……それにしても、どうする?早めに出る?」

「どうしようか?」


 咲ちゃんとひまりは顔を見合わせ、「うーん……」と唸っている。


「それならもうちょっとゆっくりしてから出かけよう」

「わかりました。……じゃあ、もうちょっとお邪魔してますね」


 咲ちゃんは可愛い笑顔で微笑んだ後、ソファーの位置をずれ、少し詰めた後、さっきまで座っていたところをポンポン叩いた。


「こっちに来て下さい。立ちっぱなしはきついですから」

「ああ。ありがとう」


 その言葉に甘えてその場所に座ると、咲ちゃんは嬉しそうに笑う。だが、今度はひまりが不機嫌そうな顔でこちらを見つめてくる。

 今のソファーの並びは、奥から、ひまり、咲ちゃん、俺だ。だがひまりは、おもむろに今座っているところから立ち上がり、咲ちゃんと俺をずらし、さっきまで俺が座っていた一番手前の場所に座った。


「これでよし!」


 何がよしなのかわからないが、満足そうにしているし、まあ良いだろう。

 咲ちゃんとひまりは、さっきの続きなのだろうレースゲームを再開する。

 このレースゲームはコントローラーを操作するだけのはずだが、この二人はといえば、盛り上がっているのか体をどんどん動かしたりしながら楽しんでいる。

 ちょっと咲ちゃん。体は倒さなくても曲がれるんじゃないか?という感じで、狭いソファーの上だから仕方ないが、体が当たったり、ふとした拍子に匂いが鼻をくすぐってくるので、落ち着かない。

 

 それに、咲ちゃんとひまりに挟まれる形というのもいけない。妹分たちとはいえ、女の子。そう意識してしまった。

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