第10話 お祝いの鯛

 九郎と玉枝は、帰る途中、スーパーに寄る。玉枝が祝いだと称して鮮魚コーナーで真鯛を買わせる。

 帰宅すると玉枝はさっそく真鯛を3枚におろす。半身を刺身にして、半身の半分を塩焼きにする。

 残った半身とアラは冷蔵庫に保存する。

 夕食はご飯に真鯛の刺身と塩焼き、みそ汁である。刺身は量が多く九郎は残してしまうが玉枝は残った刺身を昆布締めこぶじめにする。

 玉枝が聞く

 「お祝いの鯛はどうでした。」

 「おなか一杯だよ。」

 「それじゃ、私を食べられませんね。それとも別腹ですか。」

 「結構です。それより何のお祝いなの。」

 「あやめちゃんのお父さんに認められた祝いですよ。」

 「顔合わせしただけだよ。」

 「何言っているんです。父親公認の仲ではないですか。」

九郎にはいまいちピンとこない。玉枝は浮かれている。

 九郎が風呂に入ると玉枝が全裸で入って来る。混浴は九郎にとって日常になりつつある。玉枝は九郎の体を丁寧に洗う。

 九郎が玉枝に聞く

 「日曜日のお祓い、玉枝さんは大丈夫なの。」

 「私を祓える霊能者がいるのだったら会ってみたいです。」

 「えらく自信があるんだね。」

 「こう見えても・・・」

 「こう見えても、何?」

 「何でもないです。日曜日は私がいるから大丈夫ですよ。」

 「分かった。よろしくお願いします。」

 「はい、お願いされました。」

九郎は玉枝がいれば安全だろうと思う。

 今夜も九郎の横にはネグリジェ姿の玉枝が添い寝している。九郎は欲望に耐える精神力を試される。

 朝起きると玉枝は朝食を用意している。ご飯にこぶ締めをした刺身に鯛のアラの潮汁うしおじるである。

 九郎は今日の朝食を気に入る、ご飯をおかわりして刺身をご飯に乗せると茶漬けにして食べる。

 九郎が着替えると玉枝はレースの付いた白いブラウスにデニムパンツ姿になる。

 九郎は玉枝がどこでファッションの知識を仕入れてくるのかと思うが黙っておく。

 大学に着くとつよしが声をかけてくる

 「おはよう。社本さんとはどうだい。」

 「おはよう、社本さんの家に行ってきた。」

 「やるなー、何かしたのか。」

 「お父さんに会った。」

 「それじゃー、何もできないな。」

つよしは何かやましいことを考えているらしい。

 「つよしこそ、みこさんとどうだったんだ。」

 「みこと付き合うことになったよ。」

 「手が早いな。」

 「自分に正直と言ってくれ。」

 「レポートはできたの。」

 「なんとかな。」

九郎はつよしと美琴の間に何が起きたか聞かないでおく。九郎とつよしは教室に入り席に着く。

 あやめと美琴が教室に入ってきて、あやめが九郎の隣に美琴がつよしの隣に座る。

 教室では九郎とあやめがカップルだという認識が広まってゆく。

 午前の講義が終わると学食で昼食を食べる。

 つよしが言う

 「部活はしないのか。」

 「運動系は遠慮するよ。」

 「軽い運動をして遊ぶ部活があるんだが。」

 「なんだその浮かれた部活は。」

 「ハイキング部と言って、昨日みこと一緒に入ったんだ。九郎と社本さんもどうだい。」

九郎にとってあやめと一緒と言うことが得点が高い。美琴も言う。

 「他にも女の子がいるからあやめも入ろうよ。」

 「とりあえず見学しようかしら。」

 「社本さんが見学するなら行くよ。」

九郎とあやめは午後からハイキング部と言う怪しげな部活を見学することになる。


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