第1話 あっ!?


「この魔王に良く楯突くね〜〜キミ」


「何が魔王だ!? あっ!?」


「何てふてぶてしい態度をとるんだねキミは、何様のつもりかね、この魔王ギルモア・ダークを前にして」


「俺か!? 俺の名前はメディウス、お前が魔王ってんなら、俺は魔法王だ!? ゴラァ」



「魔法王? そんなの聴いた事が無いね〜〜、と言うか、魔法系に関して絶対的な力を持ったものを魔王って言うんだよ!? まあいい、どれ? 冥途の土産にキミを鑑定してやろう」



 カッと第三の瞳を開くと、彼はメディウスのステータスを確認した。そして、唾を飲み込んだ。魔王は彼のデタラメな数値を見て驚いた。



「何!? そっ、そんな馬鹿な!?」


「何が馬鹿だ、あっ!?」


「信じられん」


「何をだ、ゴラァ!?」


「ウヒャヒャヒャ、ウヒャッ、ウヒャヒャヒャヒャヒャ、ヒーヒッヒッヒッ」



 魔王の奇妙な笑いに流石のメディウスも訝しがる。



「おい、気持ち悪いな〜〜テメェ」


「出鱈目だ、出鱈目だよ全く、ハッ。恐らくキミは転生者か? 何かかね?」


「あっ!? 転生者? 何だソレ、俺は魔法王っつてんだろが」


(ちっ、勘のいい野郎だ、流石に魔王って自分の事を呼ぶだきゃ有るか)



先程までとは打って変わって、ギルモアは不快な眼を彼に向けた。



「知らばっくれるのも大概にしろよ人間!?」


「あっ!? 何をだ?」


「そんな出鱈目のチートステータスを持つ人族は、この世界では有り得ないんだギョォ~!?」


「フンっ、知るかよ」


「あくまでもシラを突き通すか、まあいい。確かに人族としてはキミは強いよ。でもね、私には到底及ばないみたいだけどね、フヒャヒャヒャ」


「何?」



 その言葉を聴いたメディウスは魔王に気付かれないよう、能力便で魔王のステータスを確認した。背中に嫌な汗が流れるのを感じる……


 奴に嘘偽り等無かった、今のメディウスでも敵わないと分かったからだ。でも、それで終わらす気が無い。何故なら、それがメディウスだからだ。



「テメェこそ、出鱈目だな」


「何がだい?」


「隠してもしょうがねえから言うがよ、お前と同じで今テメェを鑑定してやったところだ」


「ほお!? この私のプロテクトを越えてステータスを覗けるとは、なかなかやるじゃないか、というよりムカつくね~~」



 瞬間、後ろの銅像が破砕した!?


 メディウスは瞳を微塵も閉じていなかった。しかし、見えなかった。幾多の戦闘を繰り広げ、剣聖と言われた相手さえ膝をつかせた男の彼が、先程の魔王の初手を見落としたのだ。


(ちっ、いつの間に攻撃しやがった)



「気に食わんね~~な全く」


「何がだね?」


「あっ!? せっかく六魔将を闇に還したと言うのに、テメェと来たら奴らの強さと比べたら、桁が違い過ぎるじゃねーーか!?」


「ああ、その事。それは私のせいじゃない。彼等が弱過ぎるのさ、ンクク」


「………」


「おや? 怖気づいたのかい?」


「あっ!? バ~~カ、んな訳有るか!?」


「ほぉ、この私の力を見てもまだやる気かね?」


「あっ!? 俺は魔法王だからなっ、」



 さて、どうしたものか? 強気に振る舞ったまではいい。だが、打開策が無い。正直自分が何百人居ても野郎には到底勝てねーーとメディウスは思った。彼はピンチに立たされていた。でも、引く事は出来ない。そう、自分以外に奴に立ち向かおう、等と思う鹿は他には浮かばなかった。


 俺はあの時死んで居なければ、今頃は青春を謳歌していたはず。



「一体何を考えてるんだね? やるの? やらないの?」


「うるせー、死ね!?」

(無詠唱だ、くたばれ)





     ━━グラディウス・ノバ━━

 






 そう、あの時俺があんなことに夢中になっていなければ………

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る