紅狐

和泉 花乃羽

プロローグ

「どうして、助けたの…?」

雪荒野の中、私は血を流している青年に話していた。

「私は狐よ?騙してるかもしれないのに…」

「それでも、いいんだ…」

「え…?」

青年はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「僕は、君を助けたかった。たとえ君が僕を騙していても、僕は君を守れて……幸せだよ」

私の頬に温かい何かが伝う。

「だから、ね…」

「          」

その一言に苦笑してしまう。

「なにそれ、ほんと相変わらずなんだから…」

「頼んだ、よ。紅巴いろは

だんだん冷たくなる体を、私は見ていることしかできなかった。

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