ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!!~世界が滅びる未来を知った五人の少年少女はヒーローになる約束をした~
第1話 「ズーンッ!」からの「バイーンッ!!」からの「ギューンッ!!!」 7 ―柏木はどう倒せるのか―
第1話 「ズーンッ!」からの「バイーンッ!!」からの「ギューンッ!!!」 7 ―柏木はどう倒せるのか―
7
怒涛の一時間を終えた正義達は、
「ちきしょう……逃がしちまった!!」
……という、自分自身へ憤る言葉や、
「私、もうダメ、クタクタだよ……」
……という様な言葉を口にしながら《英雄達の秘密基地》へと帰ってきた。
時刻は午前三時を過ぎている。英雄達は英雄であるが、学生でもある。陽が昇れば学校がある。
しかし、英雄達は睡眠時間を削ってでも今すぐに会議を始めたかった。
その議題は勿論、
「柏木はどうすれば倒せるんだ!!」
……という内容だ。
まず『どうすれば』と口火を切ったのは勇気。彼はテーブルを強く叩いてこの言葉を口にすると、苦虫を噛み潰した様な表情を隠さないまま、切り株の椅子に座った。
「近付いたら消えるって卑怯だよね! 逃げるくらいだったら攻撃してきたら良いのに! 馬鹿にされた気分!」
次は愛。
愛はついさっき『私、クタクタだよ……』と口にはしたが、既に瞳がギラついている。このギラつきの出所は怒りだ。愛は怒りを持って切り株の椅子に座った。
「卑怯……確かにな。でも、柏木の思惑にまんまと嵌まっちまった俺達も悪い。柏木の分身は近付いちゃいけない分身だったんだよ」
これは正義。
正義は髪の毛を掻き回しながら、静かに勇気の正面であり、愛の隣である切り株の椅子に座った。
「近付いちゃいけない分身……だボズか?」
ボッズーは既に切り株のテーブルの上に着陸済み――そんなボッズーの問いに、正義はこう答える。
「あぁ……デカギライの分身はさ、実体を持っていて敵を攻撃するのが目的の分身だったじゃん? でも、柏木のは逆だったんだよ。自分が逃げるのを目的とした分身……実体の無い分身を多く発生させて、それに俺達が惑わされている内に自分は逃走を図る、みたいな」
「成る程……だから『近付いてはいけない分身』か……」
この正義の意見に勇気は納得の表情を浮かべた。
「確かに。元々、ヤツは好戦的というよりも、逃げるのを優先させる奴だったからな……」
「そっか……」
勇気の次に納得の表情を浮かべたのは愛だ。
「それじゃあ、『分身が増えて楽になる』って考えてた私の考えが甘かったって事か………柏木の策略にまんまと嵌まりにいってたって事だし……はぁ、でも、だったら尚更ムカつく! ねぇ、ボッズー? 次はもっとキュアリバの回数を増やしちゃダメかな? 私、悔しいよ」
愛はこう言うが、ボッズーは『ダメダメ』と首を振った。
「ダメボズ、キュアリバの回数は五回で適数だからなボッズー」
「でも!」
「でもじゃないボズ。次は、キュアリバが消える前に、俺の"サーモグラフィーカメラみたいに見えるヤツ"でも、サッサと柏木を見付ければ良い話だボズよ。頑張るのは俺ボズ、愛はキュアリバを外さないようにしてくれれば十分だボズよ」
このボッズーの意見に勇気がコクリと頷いた。
「桃井、ボッズーの言う通りだ。キュアリバは五回で良い。さっきも言ったろ?柏木にキュアリバを使い過ぎるのは良くない。折角ヤツを見付けられても、キュアリバが多ければ多い程、今度はヤツに俺達の攻撃が通じなくなってしまうのだからな」
「そうボズ。だから愛は、キュアリバを外さないように練習しといてくれボズよ!」
「そっか……」
愛は納得半分、悔しさ半分の表情を浮かべ、それから、空に顔を向けてバスケットボールをシュートする様な動作を始めた。
「先輩や、女の子達を怖い目に遭わせた柏木に、痛い目を見させるのは私が良かったんだけどな……」
「ふっ……」
この姿に勇気は優しく微笑んだ。そして、こう続ける。
「良し……なら俺は柏木を追いかけながらも、すぐに正義がジャスティススラッシャーを使えるように二丁拳銃に力を溜めておこうか」
「うん、それが良いボズ! 敵は素早いボズよ、一気呵成が良いボズ!」
英雄達の会議の結論はひとまず纏まった………と見える。だが一人、未だに首を捻る男がいた。
「それじゃあ次は、『今度はどうやって柏木を誘き出すのか?』を考えようか。次も今日と同じやり方をしても、アイツは引っ掛からないだろうからな…………ん? どうした正義? 何か言いたそうだな?」
その一人に気が付いたのは勇気。勇気は髪の毛をぐちゃぐちゃに掻き回す正義の可笑しな挙動に気が付いた。
「ん? 言いたい事?? いやいや、別に言いたい事っつーか、俺も今の作戦で良いと思うんだけどさ。ちょっと気になる事があってさぁ……」
「気になる事? 何だそれは?」
「うん……あのさ、俺達が本郷で白いモヤモヤを初めて見た時って、あの時の柏木ってまだ……」
………と、正義が何かを言おうとした時、突然
「皆さん、何やら仰々しい顔をしているね。会議中かい? でも、邪魔させてもらうよ」
正義、勇気、愛、ボッズー……ではない、別の誰かの声が聞こえた。
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