第1話 「ズーンッ!」からの「バイーンッ!!」からの「ギューンッ!!!」 2 ―今後は透明人間―
2
「透明人間!」
「うん! 幽霊じゃないけど、最近出るらしいよ」
「透明人間が?」
「うん!」
驚く正義に、愛は軽い仕草で頷いた。
愛は本郷に着くと、猪突猛進に、それでいて単刀直入に『最近、幽霊が出るって聞きませんか?』と街行く人達に聞いて回った。
そして、ものの五分足らずで、駅前のコンビニから出てきた女性の二人組から情報を得て再び駅前へと帰ってきた。
「なんでも、犯人は目付きの悪い陰気な感じの男らしいよ。それで、出るのは決まって夜。しかも、一人でいる女性しか襲わないって」
「女性しか襲わない……もう襲われた人が?」
これは勇気だ。
こう勇気が聞くと、
「うん……」
愛はコクリと頷いた。
「まだ怪我した人はいないらしいけど……後ろから抱きつかれたり、体を触られたって人がいるって」
「なに……? それじゃあ、まるで変質者じゃないか?」
「うん……それで、叫ばれたりして騒がれると、男は透明になって逃げるって話だよ」
―――――
「トレンチコートの怪しい男……?」
愛が"透明人間"の情報を得た後、英雄たちは散り散りになって聞き込みを開始した。
そして、勇気がスナックの前でタバコを燻らせる女性に声をかけると、彼女が新たな情報を教えてくれた。
「そんな男が現れるんですか?」
「そうなのよ、うちの店の子もね、その男に跡をつけられたのよ」
どうやら女性はスナックのママらしく、彼女は『透明人間? そんなの知らないわ』と言いながらも、『でも、怪しい奴なら知ってるわ』……と勇気に新たな情報を与えてくれたのだ。
「跡をつけられた……確かに怪しいですね。その男は他にどんな見た目をしていたか分かりますか?」
勇気はスマホのメモアプリを開き、女性が教えてくれた情報を書き留めた。
「……ベージュのトレンチコートを着ていて、黒いハットを被っている。身長は165cmくらい。これで、間違いは無いですね?」
「うん、そうよ」
女性は携帯灰皿にタバコの灰を落としながら頷いた。
「因みに、ソイツは目付きの悪い男でしたか?」
「さぁ、そこまでは分からないわね。私がつけられた訳じゃないし。でも、困ってるのよ。店の子も二人、跡をつけられたって言うし、常連の子もやられたって……夜の店って従業員の安全も考えなきゃいけないし、客の安全も考えなきゃでしょ? 変な奴に
そう言うと女性は溜め息を吐く様に、味わい尽くした紫煙を空に向かって吐き出した。
―――――
「トレンチコートの男……ソイツが透明人間なのかね?」
「だと思う。一つの街に女性を狙う不審者が二人……まぁ、居なくはないだろうが、同一人物と捉える方が妥当だろうな。それで? 正義は何か掴んだのか?」
散り散りになって捜査を始めてから二時間後、英雄たちはファミレスに集まっていた。
「う~ん……俺の場合は、一昨日の深夜の二時に俺達が見たのと同じ"幽霊みたいな白いモヤモヤ"を見たって人を見付けただけで、勇気や愛みたいな具体的な情報は何も……」
「そうか、桃井の方は?」
「私も新しい情報は無し。透明人間の話は三人くらいから聞けたけど、最初に教えてくれた人達と内容は同じだったなぁ」
「そうか……それじゃあ、昼食を取ったら再び調査に出るか」
……と、勇気は言うが
「いんや!」
勇気の正面、正義が座る椅子の隣の椅子に置かれたリュックから声が聞こえた……ボッズーだ。
「ベージュのトレンチコートに、黒いハット、身長は165cmくらい、現れるのは深夜の二時……ここまでの情報があれば、俺の《ミルミルミルネモード》で探せそうだボズよ!」
口の開いたリュックからチラリと顔を出したボッズーは正義達に向かってピコンっとウインクを送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます