第6話 勇気の心を武器にして 19 ―正義に手を出すな―

 19


『我を、受け入れろ、受け入れるのならば、お前が友と呼ぶ者の、命は、助けてやる、』


「やめろ……やめてくれ……」


『ならば受け入れろ、我を、受け入れろ』


「正義に……手を出すな」


 勇気は視界を奪われた。それは文字通りに。

 勇気の目は開いているのに、目の前に広がる景色は何も見えていない。代わりにピエロとデカギライによって、いたぶられるセイギの姿が見えていた。

 勇気の脳内に響く謎の声……これは、勇気の前に漆黒の闇が再び現れたあかし

 そして、その闇によって、勇気の目はピエロの目に繋がれてしまっていた。ピエロが見ている光景を、勇気は見させられているんだ………


「正義に……手を出すな」


『なら、ば』


「正義を殺さないでくれ……」


 勇気はセイギが攻撃を受ける度に


「やめてくれ……」


 正義への攻撃を止めさせようと、闇に願い続けた。


 しかし、その願いを闇が聞く事はない。

 それでも勇気は願い続けた。

 今の勇気は正常な判断は出来ない。勇気の中へと入り込んだ闇が思考を鈍らせる。それは闇に怯えているからか……いや、違う。闇がそうさせているんだ。闇が勇気の思考に靄を掛けているんだ。


 それでも勇気は闇に立ち向かう。勇気の中には闇に立ち向かう心があるから。デカギライから警官達を助けようとした時と同じ様に。


「正義に……手を出すな……」


『なら、ば、我を受け入れろと、言っているであろう』


「……手を出すな……代わりに俺を殺せ」


『何、』


「殺せ……殺すなら俺を殺せ……」


『何を、言っている、お前は死ぬのが怖いのだろ、英雄気取りは、やめろ、お前は我等側の、』


「違う……俺が本当に怖いのは……」

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