第二章 勇気の英雄の激誕 編

第1話 大木の中へ

第1話 大木の中へ 1 ―悪夢―

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 ハァ……ハァ……ハァ……


 ねぇ、母さん、母さんどこ?


 どこに行ったの?

 なんで誰もいないの?


 ハァ……ハァ……ハァ……


 僕は今どこにいるの?

 なんでこんなに真っ暗なの?


 走っても、走ってもどこにも着かない

 怖いよ……怖いよ……


 父さんどこ?

 父さん、助けて……


 うわっ………!!


 誰? 僕の肩を掴むのは?


 誰? 僕の足を掴んだのは?


 え………


 真っ黒な手……


 真っ黒な手が僕を掴んでる


 やめて………!!

 いっぱい……いっぱいの人が僕の体を掴んでくる。


 どうしたの?なんでみんなそんな怖い顔をしてるの?

 ねぇ、なんでみんなそんな苦しそうな顔をしてるの?

 ねぇ、なんでみんなそんな羨ましそうな顔をしてるの?


「………と、………たい」


「………ない…よ」


 え………?


「………えも、……い…こう」


 なに?何て言ってるの?


「もっと、生きたい……」


 え………?


「死にたくないよ……」


 なに言ってるの?


「お前も………一緒に逝こう……」


 怖いよ……みんな、何言ってるの?変だよ?


 あっ………!!


 やめて、引っ張らないで!


 ヤダよ……ヤダよ……僕はヤダ……死にたくない!


 助けて! ……助けて!! 父さ………え?


 なんで………


 なんで、なんで、父さんがそっちにいるの?


 なんで……父さんもみんなの中にいるの?


 え………あっ………


 そっか………


 父さんは死んだんだ……


 父さんは死んだんだ……

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