序章 ―始まりの日―

 六年前、小学五年生の俺は不思議な男の子と出会った。


 その男の子は突然降った大雨の中、輝ヶ丘かがやきがおかの大木の下で寂しそうに座っていた。


 輝ヶ丘の大木とは、俺の故郷、《輝ヶ丘かがやきがおか》にある山の中腹ちゅうふくの高台に立つ大きな大きな木の事だ。

 それはそれは大きな木だから、町のどこからでもその姿を見る事が出来て、町の人達からは「守り神様」や「守護神様」と呼ばれていたりもする。


 当時の俺は、公園で遊んでから、駄菓子屋へ行って、それから輝ヶ丘の大木の近くで遊ぶ……そんな毎日を繰り返していた。

 その日も俺は友達と一緒に大木の立つ高台に行った。「んじゃ、鬼ごっこでもしようか!」なんて話していると、天気予報でも言ってなかった突然の大雨が降り出した。

 慌てた俺たちは雨宿りをしようと大木の下に駆け込んだ。


 そして、男の子と出会ったんだ。


 友達と一緒だったのだから、ひとりじゃない。


 いつも一緒に遊んでる同級生の青木あおき勇気ゆうきと、幼稚園からの幼馴染の桃井ももいあい、学年は違うが何故か気が合う黄島きじまゆめ、最後に弟みたいに可愛がっていた一番年下の緑川みどりかわまさる、いつもの仲間と一緒だった。


 その男の子は初めて見た子だったから、はじめは誰も話し掛けようとはしなかった。けど、その子があまりにも寂しそうな顔をしていたから、俺は話し掛けてみる事にした。

 話し掛けてみると、俺たちはすぐにその男の子と友達になれた。友達が増えると、俺達はうずうずしてきてしまって、気が付けば雨宿りをしていた筈なのに、雨も気にせず鬼ごっこをして遊んでいた。



 それから……



 ひとしきり遊んだ後、男の子は不思議な事を俺たちに言ったんだ。


「6年後の2月15日の夕方17時、空が割れ、世界に破滅をもたらす王が現れる」


……と。


 そして、もう一つ。


「私は君達に英雄になってもらいたい。君達に世界を救ってもらいたいんだ」


……と。

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