第3話 空が割れた日 12 ―魂の旅―

12


――――――――



「おいッ! 正義ッ!! 寝てる場合かボッズー!! 起きろよ!! 敵がやってこようとしてるんだ早く起きるんだボッズー!!!」


「正義さん!! 起きて! どうしたの!! 起きてッ!!」



――――――――



「うわっ!!!」


 瞼を閉じた瞬間、正義の脳に猛烈な勢いで映像が流れ込んできた。

 その流れ込んでくる感覚は、この世界に来る前に襲ってきた魂が抜ける様な感覚にも似ていた。

でも、正義が『うわっ!!!』と叫んだ理由はその感覚よりも、脳に流れ込んできた映像のせいだ。

 映像の中ではボッズーと希望が正義の体を揺さぶりながら叫んでいたのだが、その揺さぶられる感覚はまるで本当に揺さぶられているみたいで、しかも、背中や腕や足や顔に羽毛の様に柔らかい草の感触もした。

 それに、大木や草っぱや高台に吹く風の匂いも。そんな映像に正義は『まるで一瞬で、この純白の世界から輝ヶ丘に帰ったみたいだ……』と思ったんだ。


 そして、驚いた正義はすぐ瞼を開いてしまった。


「び……びっくりしたぁ。な……なんだ今の!!」


「ふふ……見えたようですね。今のは、貴方の魂を一度貴方の肉体に戻したのです。言ったでしょう。私は貴方をこちらの世界に転送させていると。それは魂の旅」


「た……魂の旅?」

 この言葉、正義は心当たりがあった。


「そう。私は貴方に会いたいと願いました。その願いは貴方の魂をこちらの世界に転送させるという形で叶いました。以前にもこういう体験をしましたよね?いえ、以前より今日のは苦痛だったかも知れません……申し訳ない。前は私が貴方達の所へ行き、私の魂を介して旅をしましたが、今回は貴方を私の場所へ呼んでしまった。その弊害ですね……」


「魂の旅……」

 この時、正義は過去に経験した強烈な体験を思い出していた。そして、その体験をさせてくれたある人物の事も。

 いや、その体験もその人も、思い出そうとしなくても思い出せた。何故なら、その時の記憶はいつも彼の頭の中にあったから。



 それは今から6年前の記憶……



 突然の雨に降られ、輝ヶ丘の大木の下へ雨宿りに駆け込んだ正義やその友人達は、不思議な少年と出会ったんだ。その少年は正義達に言った。


『君達に世界を救ってもらいたいんだ!』


 と。


― そして、俺達は手を繋いで目を瞑った。そして知ったんだ。"今日"起きる事を……


『今から私と一緒に魂の旅へ出ましょう。怖がる事はありません。一瞬ですから。ただ、今から貴方達の目に映る事を決して忘れないで下さい。全ては夢でもなく、預言でもない、これから貴方達の未来で起こる現実なのです……そして、私にとっては過去の出来事。さぁ、行きましょう。魂を旅立たせます……未来へ』



 ………


 ………



「へへっ……そうか、あの子か!」


 やっと正義の中で過去と現在が一致した。


「へへっ! やっと分かったぜ。"君"が誰なのか」


「思い出してくれましたか?」


「うん、でも、まさか"君"とは思わなかった……ごめん!」

 正義は勢い良く頭を下げた。


「あ……顔を上げて下さい。声だけでは難しかったでしょう」

 と声の主は「ふふふ……」と笑った。


「うん……それもそうなんだけどさ」

 声の主は誰なのか分かった。でも、一つ疑問があった。

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