第3話 空が割れた日 6 ―勇気を責めないでくれ―

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 光と轟音はそれまでよりも強く、痛い程の光が町を襲い、二度三度四度と続いて轟音は響き渡った。


 大地の揺れは、地球が目前に迫る驚異に震えおののいていたのかも知れない。

 昨日までなら『そんな事を言う人間は狂っている』と人々は言っただろう。だが、"今日"からは違う。

 今までの人類の常識では測れない出来事が今、正に起ころうとしているのだ。



 されば、恐怖を覚えた勇気を誰も責めないでほしい。



 地球が震える程の驚異に一介の少年が怯えない訳がない。勇気は臆病者ではないのだ。それどころか、迫る驚異を未然に知り、"今日"までこの驚異から逃げようともせず、世界を守ろうと準備を進めていたのだから。


 全ては当然、恐怖を覚えて当たり前なんだ。


 でも、勇気にはそれが分からなかった。勇気は恐怖を覚えた自分を責めた。『勇敢に戦う英雄でいなければならない自分にとって、恐怖は覚えてはならない感情だ……』と間違った考えを持ってしまっていたから……

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