第47話 異世界で目が覚めたら言ってみたい言葉
俺は約三百年前この世界、正確にいうのならばこの数多の世界がある世界の一つに生まれた。
その時もそうだが、異世界で目が覚めたら言ってみたい言葉と言うのがいくつかある。
「知らない天井だ」
「何言ってるの? 」
部屋からサラシャの声がする。
それと同時に果実の匂いが
「はいこれ。
「俺がいつ目覚めるかわからないのによくもまぁ。だが
「そうし
俺は体を起こして皿を取る。
地球で言う所の桃のような果実『ピュチ』を手で取り口に入れる。
シャリっと音がし、果汁が口の中に染みわたる。
「うまっ! 」
「そりゃそうだよ。この国の名物だもの」
隣を見るとサラシャが笑顔を咲かせている。
外から差し込む光が桃色の髪を反射し綺麗に輝く。
少し
「どうしたのさ。変な顔をして」
「別に何も」
「顔を
「ち、ちがう! 」
「あやしぃ~」
「違うってば……。全く」
そう呟きながらももう一つ手に取り
再度甘味が体を駆け巡る。
皿に
「さて」
そう呟いて、本当に知らないベットから降りようとする。
ベットから降り足をつけようとしたら、ぐらついた。
「大丈夫?! 」
「あ、あぁ……」
サラシャが俺を
「長く寝ていたんだからもう少しゆっくりしないと」
「……
「一週間」
それを聞いて驚いた。
精霊界で修業して倒れ込んだときでも、そんなに長く寝込まなかったぞ。
だが仕方ない。あれほどに緊張状態が続いたんだ。
「そう言えば解放した人たちは? 」
「皆頑張って働いてるよ」
「もうか?! 」
その行動力に驚き目を見開く。
「
俺がそういうと、サラシャは指を
そして俺の方を見て言う。
「多分違うと思うよ」
「というと? 」
「何かしてないと……ほら。前の事を思い出しそうでさ。働いていた方が気がまぎれるでしょう? 」
「確かに」
納得の理由だ。
「で。今どんな職に? 」
「いなくなった冒険者達の代わりに素材調達」
「......出来るのか? 」
「先陣切ってやってくれる人がいるから大丈夫だよ。丁度技術者もいたみたいだしね」
イタズラめいた表情をしそう言うサラシャに少し溜息。
戻ったベットの中でふぅと息を吐いた。
少し時間が経つとサラシャが口を開いた。
「後で母上が魔王城に来てほしいってさ」
「魔王城に? 」
「
それを聞き、少し顔を
褒章か。
多分犯罪者をとっつかまえたことに対するやつだろうな。
「まだダンジョン管理人として功績を上げたわけじゃないんだが」
「まぁそう言わず受け取りなよ。貰って減るもんじゃないし」
「……モヤモヤするな」
「
まぁあれだけの事をして魔国内の冒険者ギルドに何も影響がない、と言うことはないだろうな。
そう思いながらもこの日を終える。
体が馴染んだ三日後、俺は魔王城へ足を運んだ。
★
「
魔王リリスがそう言った。
俺はその言葉に
ここは魔王城『玉座の間』。
謁見の間とは異なる、正真正銘の『魔王の為の部屋』だ。
「ダンジョン管理局ハデル・エルよ。この
「陛下のご判断があってこその結果でございます」
魔王配下の重鎮達が見守る中、とってつけたような敬語でそれっぽい事を言う。
流石に周りで見てくる重鎮達の前で変なことは言えないからな。
多少変でもやらないよりかはマシだ。
「今回の功績に対し何か褒美を与えようと思うのじゃが……。さて、何を欲する? 」
そう言われ、考える。
欲しい物か。
お金はもう貰えることが決定してるから活動資金に心配することはない。
家はどうだろうか。いや……。報奨金で買えるな。
ならば——。
「では恐れながら」
「うむ。何でも言うが良い」
「この魔国におけるダンジョン探索権を頂ければと」
それを聞ききょとんとする魔王。
だが続ける。
「ご存じの通り現在魔国内に置いて冒険者ギルドの存在が
「……そちもダンジョンが好きよの」
「
「あい分かった。ハデルにダンジョン探索権を与える。それに加え魔国内における逮捕権も与えよう」
魔王リリスが立ち上がりそう言った。
逮捕権。厄介事を押し付けるつもりだな!!!
こうして俺は玉座の間を去る。
帰りに職員証を更新してアベルの町に戻った。
さぁ。俺の異世界生活を再開しよう!!!
——
後書き
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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