第10話 ハデルは助ける
「場所は? 」
「ここから少し離れた所ですわ」
「規模は? 」
「大きくありません」
広げていた物を片付けながらベルデの報告を聞く。
俺も探索・探知は出来るのだがベルデの方が範囲が広く、そして正確だ。
「近くに行かないと詳しい事はわからない、か」
「……戦闘を
おずおずと言った感じでサラシャが言う。
彼女を方を見ると悪い事をして怒られている子供のような顔をしていた。
「……順調にガルドア王国に着いて魔界に行くのならそれが一番だろう」
「なら無理しなくても」
「そうなんだが……、まぁ知ってしまった以上見捨てる訳にはいかないよな」
「そっか」
とだけ言い俺の方を見る。
「僕も着いて行くよ」
「遠くにいても良いんだぞ? 」
「これでも戦闘慣れしているんだよ? 」
自信満々なサラシャに笑顔で返して——置き
★
「ちっ! つぇな」
「防壁を張れ! 一歩も近づけさせるな! 」
「おいてめぇら! 気合い入れろ! 」
キィン!
賊の
男と女。
腕力に差があるはずなのに両者の力は
「焼き
奥から賊の魔法使いが火球を放つ。
しかしそれは
火球の火花が周りに散る中騎士達が賊と切り合う。
そして女騎士はあることに気が付く。
「……ただの物取りじゃないな! 」
「さぁね。ただ俺達が言えるのは貴様らを殺し尽くすってことだけだ」
「それだけ聞ければ十分! 」
再度大剣と長剣が交差する。
しかし—。
「あめぇ! 」
「ぐふっ! 」
賊の頭領と
隙が出来た瞬間スキルで詰め寄ろうとする。
彼女は転がり斬撃を
そこから切り上げ賊の腹を狙った。
しかしバックステップでそれを回避し剣を構え直した。
女騎士も立ち上がり剣を構え直す。
「
「はっ! 卑怯で何より! 」
「貴様に騎士道精神はないのか! 」
「俺は騎士じゃなくて盗賊なんでな! 」
もちろん彼女もそれは分かっている。
「おい。時間
「! 何故それを」
「その
「……」
「これでも目利きでな。見た所効果は体力回復に魔力回復、あとは身体能力強化と言ったところか? 」
男が
その
(まずい! )
そうとしたらそのまま横に吹き飛んだ。
★
「マスター。置いてきてよかったのか? 」
「まぁな」
「後で怒られるぜ? 」
「……それは怖い」
俺はベルデが示した場所に走っていた。
今ベルデとブルはリュックサックの中。ロッソは俺のポケットから話しかけている。
サラシャを置いて来たのには深い理由があるわけではない。
単に、悪魔族とは言え女の子を危険な目にあわせたくないというだけだ。
勝手な俺の自己満足。
「そろそろか」
俺の耳でも音が聞こえる範囲に入り足を止める。
「単なる賊……じゃなさそうだな。どこかの傭兵か暗殺者と言ったところか」
「街道で襲撃なら暗殺者はちげぇんじゃねぇか? 」
「両方を
「で、どうする? 」
「無論女性側を助ける」
「良いねぇ。その意気込み」
「じゃ、行くぞロッソ! 」
「任せろ! 」
俺の前にロッソが浮かぶ。
「母なるダンジョンよ! 我が願いに答えヨ!!! 」
瞬間ロッソが
「さぁ! 行くぜ!!! 」
俺は精霊魔杖『ロッソ』を手にして向かった。
★
「間に合ったか」
ぽつりと感想が口から出た。
女騎士が切られようとした瞬間危ないと思いかなり弱めの
危機一髪だったため手加減ミスっていたらどうしようか。
少し冷や汗を流しながら飛んでいった方向を見る。
うん。大丈夫なようだ。
他は
「き、貴君は……」
「あぁ~ちょい待ち。他を済ませてからだ」
「え? 」
女騎士に振り向かずそのまま精霊魔杖『ロッソ』を構える。
「断罪ノ炎矢」
唱えると極小の青い炎が無数に出現した。
「なんだ? このエルフ」
「頭がやられたぞ! 」
「全員あのエルフを潰せ! 」
騎士達と殺し合っていた賊がいきなり現れた俺に気が付く。
騎士を無視して俺に向かおうとするが、他の騎士がそれを阻んだ。
その間にもどんどんと炎を増やしていく。
そして全体の動きが止まった瞬間それを放つ。
「ギッ! 」
「な?! 」
「! 」
抜けてこっちに向かおうとした奴らをまず
頭に直撃した三本の矢は脳を焼く。
なにが起こったかわからず膝をつく
「何が起こっている?! 」
「分からねぇよ! 」
「退避だ! 」
誰かが叫ぶと全員が混乱から意識を戻し、後衛の魔法使いが障壁を張りながら
……。やけに
が、関係ない。
そして全弾打ち込んでその場にいる賊を殲滅した。
★
「ふぅ……。終わった」
ロッソを下げて息を吐く。
振り返り、女騎士を見ると
「あ~、あっちの頭とか呼ばれていたやつを捕まえた方が良いんじゃないか? 」
「! そうでした。おいお前達! 休むのはあとだ! 」
彼女の声掛けで他の騎士達が動き出した。
この女騎士がリーダーなのか。
感心しながらちらりと彼女の後ろを見る。そこには豪華な馬車が一つ。
貴族の護衛か? やけに豪華な馬車だが……。
そう観察していると「コホン」と咳払いが聞こえてくる。
「ご助力感謝する。先程は助かった」
「いや、それほどでも。近くを通りかかっただけなので」
「自分はシャルロッテ・シルヴァ。貴君の名前をお聞きしても? 」
「俺は——」
と言いかけた所であることに気付いた。
もしかして名乗ったらこの後面倒くさいことにならないか?
この馬車を見る限り恐らく
俺は今、ガルドア王国に行く途中。
ならば
「俺は、名も無き旅のハイエルフ、ですよ」
「む……」
俺が名乗りをあげなかったせいか彼女の顔が少し
さて、これからどう切り抜けようかと考えていると森の方から声が聞こえてきた。
「もう済んだ? 」
……。その声には少し怒気が混じっているように感じた。
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