宇宙人、母からの教え
看護師との会話には一切の無駄がない。
「気分はいかがですか?」
「死にたいです。」
この繰り返しだ。
こういう状態でなくても、私は人付き合いが苦手だ。
うまく会話ができないというのもあるが、
まず人のことが好きになれない。
これには深い理由がある。
それは幼い頃から刷り込まれた母の考えである
「人は裏切る信用してはいけない」
という言葉だ。
この言葉に私の全てに繋がっている。
人と会話はするし、遊ぶし、仕事をする。
ただそこには信用という言葉はなく、いつかは裏切られるという気持ちだった。
そのおかげで私は人とトラブルが起きても悲しむことはなかった。
そもそも裏切るものだと思いながら一緒にいるのだから。
そして最終的に心は母親の元に戻る。
「やっぱり母さんの言う通りだ」と。
小学生の時にこんなことがあった。
落ち着きもなく、忘れ物もする。発言力もなく。常に無気力。そんな子供だった私はよくいじめられた。
それを回避するために私はわざと、馬鹿を演じた。
そうすることで「いじめ」ではなく「いじり」に変え、派手なことをすることである種の「人気」を持っていた。
しかし、担任ともうまくいかず
疲れた私は学校を休みがちになった。
その中でも、低学年の頃から仲の良かった友人から自宅に電話があり、
「学校においでよ。」「俺が待ってるよ」「勉強を教えるよ」と言われていた。
はじめは迷惑でしかなかったが、
少しずつ学校へ行ってみようか。という気持ちになった。
そんなある日、天気が悪くなり私は持病の喘息がでてしまった。
咳が止まらなく息苦しい。胸が凹み、ひゅーひゅーと隙間風のような音がなる。咳のしすぎで腹筋が筋肉痛のように痛む。地獄の時間だ。
2日ほど学校を休み
だいぶ身体の具合もよくなった。
いつもの友人から電話があった。
「具合どう?学校これそう?」
『うーん。まだ苦しいよ』
「そうかぁ。明日さ、先生が休みなんだよ。」
『そうなの?』
「だからさ!学校にでておいでよ!みんな待ってるからさ。苦しかったら座ってるだけでもいいよ!」
正直嬉しかった。
次の日、喘息の薬をしっかり飲んで汚れたランドセルを背負い学校へ向かった。
校門の前で胸が苦しくなった。
けど、教室には友達が待ってる。
下駄箱を通り
教室にむかう
廊下は静かで、
自分の教室の前で一度呼吸を整えて、
緊張しながらドアを開けた。
拍手が巻き起こり、私を圧倒した。
そして休みと聞いていたはずの
担任がそこで私を指差しながら
「ほらな、来ただろ!」と大笑いした。
そして
「ほんとだー。まじかよー。」と同じクラスの子供達が笑う。その中に連絡をくれていた友人もいた。
担任は近づいてきて
「仮病はよくないわ」と一言私に伝えた。
すべてを察した。
友人は私を学校に来させるために連絡を取り続けていたのだ。
私が来るか来ないかが、賭け事になっていて来たら宿題がなくなり来なかったら増えるという内容だった。
私は胸の奥で隙間風が吹き続けているのを感じながら「仮病で休んでごめんなさい。」と謝った。
友達なんていないしいらない。人の優しさなんて受け入れない。信用なんていらない。と強く決めた出来事だった。
やはり母親が正しかった。
…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます