『マイラブリー国民カード』

やましん(テンパー)

『マイラブリー国民カード』


『これは、コメディ・フィクションであります。この世界とは無関係です。』



          🚀



 あるひ、学生時代の同窓会のあと、むかしの仲良しと、うどんやさんに入りました。


 みんな、歳はとったよなあ、という感じですが、音信不通の人は別として、取りあえず全員生きてはいるようでした。教授も、まだまだ元気。めでたいめでたい。


 世の中から、完全引退しているのは、ぼくだけみたいです。


 そのうどんやさんは、大昔からあるお店であります。


 『らっしゃい。』


 たぶん、跡継ぎの大将らしき人が、威勢良く迎えてくれました。


 『まいど。え、まず、国民ラブリーカードを提示ください。』


 『なんと? なに、それ。』

  

 田舎ずまいのぼくは、知らなかったのであります。


 昔の友人が言うには。


 『あ、まやしんくん、知らないの? 首都圏は、先行実施で、今月からは大概の場所に出入りするとき、マイ国民ラブリーカードの提出が義務になったんだよ。飲食店も、お風呂やさんも、パチンコ店も、病院もね。で、先に提示したら、お会計は、自動になるんだ。提示しないと入れない仕組みなんだ。65歳以上には、割り引きもあるよ。』


 『はあ。だって、さっきは言われなかった。そんな話しがあったかな。あったような気もするけど、気にしてなかったからな。』


 『同窓会とかは、まだ、今のところ、代表が済ませるんだ。でも、半年先には、全員個別対象になるみたい。』


 『はあ〰️〰️〰️〰️☺️ でもでも、まだ、そんなの持ってないよ。』


 すると、大将が言った。


 『スマホの登録情報でも、いいっす。』


 『はい? いや、ないっすよ。まだ、カードの申請もしてないよ。スマホ持ってないよ。まだ、携帯だよ。』


 『そりゃ、やっかいですな。ならば、その先のコンビニさんに、全国市役所の端末になる機械がありやすから、そちらで、住民票と、マイ国民ラブリーカードの資格確認シートをとってきてください。』


 『しなかったら?』


 『残念ながら、うどん、その他も、食べてもらえないす。』


 『うな、ばかな。』


 『そういう、指導なんで、破ると営業できなくなりますから。』


 『市役所の書類て、ただではないよな。』


 『そら、まあ、1枚300ドリムくらいだったかな。やったことないけど。でも、コンビニの買い物にも要るよ。』


 『なんと。日帰り予定だし、500ドリムのうどん食べるのに、そこまでするか。でも、きみは、持ってるの?』


 『もちろん。』


 『そんな、よいこだったかなあ。』


 『死活問題だから、仕方ない。でも、自販機でもカード必要だぜ。まだ、使ってないかな。』


 『いや、さっき、駅で、カンこーしー買おうとしたら、買えなかった。なにやら表示が出たけど、老眼で近眼で乱視だからな。それが原因か。まあ、さっきの会場で、たくさん食べたし、お茶のペットボトル、もらったし、当面はいいか。じゃあ、仕方ないから、ぼくはいいよ。食べてくらさい。』


 『あの、きみ、帰りのキップ持ってるの?』


 『いや、帰りに買おうと思ったから。』


 『そりゃ、まずいな、キップ買うのにも、必要だぜ。やはり、取ってこいよ。待ってるから。あ、国道歩くのには、ラブリーカードがいるよ。左にいって、市道を遠回りしてください。』


 『そ、そこまでやるかあ。しょうがないな、帰れないと困るしなあ。』


 『んだ。ホテル泊まるのでも、必要になるよ。1枚取っとけば、使いまわしできるから、便利だよ。さらに、ラブリーカードがあると、ポイントが溜まって、色々、特典が使えるんだ。』


 まあ、ここは、やむを得ないから、コンビニに行こうと歩き出しました。


 そのむかしは、コンビニなんてほとんど無かったしなあ。


 あ、コンビニ発見しました。


 で、お店に入った瞬間でした。


 『空襲警報。空襲警報。核ミサイル攻撃です。すぐに、近くのシェルターに入ってください。』


 と、来ました。


 すると、辺りの人々は、さっと消えました。


 さらに、昔の友人から電話が入りました。


 『おら、シェルターに入るから、きみも✊‼️がんばれ。』


 なんのことやら。


 『しまりま〰️〰️す。』 


 と、コンビニの店員さんが叫び、いなくなりました。


 住民票とか、もうほっといて、あわてて通りに出ましたら、コンビニはシャッターがばちゃっと、降りました。

 

 良くみれば、上方に『シェルター口』という標識が複数あります。


 『ゆくべし。』


 と、断固判断して直行。


 閉まりかけのドアの前に、係官らしき人がありました。


 『はやく。閉鎖します。』


 『あわわ、いれてくらさい。』


 と、叫びました。


 『はい。国民マイラブリーカードをリーダーに入れて。はやく。』


 『持ってないす。』


 『あらま。じゃ、だめです。さようなら。』


 その人は内部に消え、ドアは閉鎖されました。


 

 あっという間に、周辺は閑古鳥も鳴かない廃墟みたいになり、新聞紙の切れ端が、さびしく風に飛ばされている、お馴染みの風景になりました。



 『も、だめか。なんのことやら。はかない人生だったな。なまごみだあ。』



 すると、空からUFOが降りてきました。


 『あー、あらた。マイラブリーカード、もってるかい。』


 と、UFOが言います。


 もう、やけっぱちであります。


 『ないよ。そんなもん。ふん。』


 『お〰️〰️〰️〰️☺️。あらたは、エイリアンですな。救助したします。』


 ぼくの身体は、すっと、UFOに吸い込まれました。


 そうして、窓のある小さな部屋に入ったのです。


 核ミサイルさんが飛び込んでくるのが見えました。


 しかし、ぼくの乗ったUFOは、あっという間に宇宙空間に上がりましたのでありました。



 足元には地球がありました。


 その地球では、あちこちに、きのこ雲が立ち上るのが見えたのです。



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『マイラブリー国民カード』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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