なれない

Rotten flower

第1話

白い箱の中で目が覚める。いつまでここにいればいいのだろうか。生憎、というか当然のことだが私にはわからない。ただ、この冷たく重い空気が少し嫌いだった。

肩に少々の痛みがあった。針に刺されるような、そんな突き刺すような痛みではなく、象に乗られるようなたいらに潰されるそんな痛みである。ただその空間には私以外の何も無く、ただ存在るのは自分だけ。という新次元でもない思考を手に入れた。これが所謂、「我思う故に我あり。」というやつなのだろう。

目を閉じて寝ようとする。無事に横になって寝れたかと思ったが電撃が一瞬食らったかのような痙攣が起こった。すると、脳内に響くパチンコ屋さんから漏れる騒音。信号機の音。そして、歩道を歩くカップルいとしあい。なぜそんなこと音がなっているのか私にはそんな風景を思い出すことはできなかった。

鉄が軋む音がする。信号機が揺れている。次の瞬間、信号機が音もなく外れ、きれいな風を切る音を鳴らした。下にはきっと私がいるのだろう。そのまま、後頭部に衝突。体は鈍い音を鳴らしたまま倒れた。


じゃあ、この白い箱は何なのだろうか。天国、はたまた地獄。それとも生と死の狭間とか?またわからない疑問が一つ出てきた。なにか小説のように転生するのだろうか。それとも天国や地獄であかり、もしくはいたみを見るのか。

ただただ神様を待つこと。いや、一方的に待つこと体感10日、何故かこの空間では飲まず食わず寝ずで行動できる。ただただ好きな音楽を脳内再生しながら端的な毎日を過ごしていた。mtメタトン爆撃の「商店街は今日もいつもどおり」というアルバムが好きだ。どこか、何かを伝えようとしてる片鱗かけらはあるのにドラムがそれを非人道的に打ち消す。この作品は生きたいという意志を伝えているのかもしれない。僕は、間奏、ギターソロで泣いた。どこか悲しんでいるようなmマイナーな音がなる。


転生ものの主人公を待ち望んで何日立っただろうか。

いい加減変化がほしい。昨日から新しくemエレクトロマンの楽曲を脳内再生し始めた。普遍的なメロディーはまるで今の私を表しているようだ。ドラム、ベース、ギター、ピアノ。全て同じ人が演奏している。録音を使うことでソロが演奏できるのだ。この曲を聞いているときだけ諸行無常変わっていくものなものが感動的に感じた。ただただ同じメロディー変化がほしい。それを年をとるということなのだろう。性別も何も知らないアーティストを敬うことなどないがこのヒトだけはそんなことをしても良いと思えた。

全てが閉ざされて果てしない時間がたった。魔法陣が床に現れる。青白い光が放たれる。神様と思わしき人物が出てきた。

神様が口を開く。

「すみません。手違いがありまして、只今現世にお繰り返しますので。」

私の時間はどこへ溶けてしまったのだろうか。

結局、主人公にはなれなかった。

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