2.大事なもの
村を出て、師匠に跨がり平地を疾走する。
「スゲエー、はえぇー」
「五月蝿い、少し黙れ」
「はい、すいません」
シュンと少し落ち込む。そんな俺を見て、師匠は口を開く。
「質問だ。これから拠点を変えるが、生きる上で必要なものはわかるか?」
「衣食住ですかね?」
「三十点」
「マスターの答えは、正しいと提言致します」
「外れ」
「……」
「……健康な体とか?」
「十点」
「マスターの答えは、正しい」
「外れ」
「正し」
「外れ」
「………」
「点数下がった……」
「答えは、お金だ」
「……銭ゲバ」
「金の亡者だと追記致します」
「銭ゲバ?金の亡者だと!お金は大事だぞ。衣食住に困らないし、健康な体を保てる」
「それはその通りですが。なんというか、夢がないというか」
「その夢に近づくために、いくら必要だと思う?」
「夢はお金で買えないんじゃ……」
「もちろん、それが全てではないさ。だけどな、夢を叶えるには、それなりのお金がいる」
どの世界でもお金は必要なんだな。あんまり知りたくなかった。
「生きるだけでも、お金はかかる。子供を育てるのに、親がどれだけ投資しているのか知らないだろ」
「必要経費ってやつですかね」
「上手いこと考える奴だな」
「マスターは凄いのです」
「アサダは知らんだろうが、下層の人間ほど、お金の大事さをわかっている。だから命を捨てでも得ようとするのさ」
そこは、地球とあまり変わらないんだな。しかしこの世界のスラム街はもっと酷かろう。
「気になっていたのだが。お前は、ソイツに名前をつけてやらないのか?」
「名前……フェニックスじゃないんですかね?」
「それは種族名だろ」
言われてみれば、確かにその通りだ。
「名前……」
ワクワク、ドキドキ。
そんなワクワク、ドキドキした目で見ないでよ。
「私は、マスターに名付けてもらえるのなら、どんな名前でも嬉しい」
期待値高すぎ。名前、フェニックス…フェス…フェニ。ピンとこないな。
「そうだ。フェネなんてどうかな?」
「フェネ…フェネ……とてもお気に入りです」
フェネは、ブンブンとツインテールを揺らす。
可愛いと感じながら、つい頭を撫でる。良かった。気にいってくれたようだ。
「マスター、頭撫でるな~。恥ずかしい」
「おい、人の上でイチャイチャするな」
「ごめんなさい」
「わかれば良い」
「もうそろそろ夜が来る。夜営の準備を始めよう」
師匠は、走るのを止めた。
火を起こし、その近くで師匠は干し肉を齧る。現在の姿は、白髪の美しい、少女の姿をしている。
相変わらず綺麗だなと、感心する。
「何を見ている?」
俺は、慌てて視線を逸らした。
「惚れたか?」
「いえ、髪が綺麗だなと」
「そうか?」
「マスターは、私にベタ惚れです」
フェネは、ふんぞり返り気味で言う。
「近くに湖があったから、後で入りに行こう」
フェネは、スルーされて少し頬を膨らませていた。
「賛成と同意致します」
干し肉を齧るフェネは、どこか獣じみていると感じる。
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