第2話 ド天然の姉
ほう。さてはド天然なのか?続けて俺は聞く。
「学校に初めて登校した日、騒がしくなかった?先輩たちが教室の前にいたりして。」
「えっ?そうなの?そんなに騒がしかった?気づかなかった。」
「マジかよ。」
「でも、私全然可愛くないからね。別に全然。日向ちゃんの方が可愛いよ。」
日向ちゃん。多分、高橋日向だろう。まぁ、確かに可愛い。でも島崎には及ばない。周りの奴らもそう思っているはずだ。それなのにだ。日向ちゃんの方が可愛い、か。自覚ないんだな。やっぱりド天然だ。こんなんだったら、変なやつに連れ去られそうで怖い。
そんな感じで島崎の本性を知れたところで、父さんが俺に話しかけてきた。
「今日から一緒に住むことになってるからね。」
俺は開いた口が閉じない。初耳だ。いくら父さんが準備万端でも、俺が準備できていない。唐突に新しい家族とはいえ、人生で女性と生活したことがないに等しい人間に今日から一緒に生活すると言うことは、無理があるだろう。もうちょっと早く言って欲しかった。しかし、俺がそんなことを言ったところで何も変わらないだろう。仕方ない。父さんの幸せのためだ、そう思い一つ屋根の下で新しい家族との生活に慣れようと意気込んだ。
家に帰ってきたのは夕方の4時頃。島崎紗栄子さん改めお母さん、島崎咲希改め姉。俺の方が誕生日が遅かったので、弟ということになった。俺以外の3人は家に行くつもりだったらしく、荷物もだいぶ持ってきていた。俺だけ仲間ハズレのような感じがしたが、父さんが悪いのであって、お母さんも咲希さんも悪くない。夜ご飯は外食することになったので、時間がある。そこでこれからのことも含めて4人で話をした。だけど何よりも俺はお母さんという存在ができたことに少し慣れないのと同時に、家族の温かさを感じた。やっぱり家族はいいものだなぁ。
そして外食をしに行く。といっても、ただのファミレス。夜のこの時間帯はどうしても混む。呼ばれるまで、待合席で座る。そこには他のお客さんもいる。男子学生から家族連れ、色々な人がいるが、必ず一回は俺たちのことを見る。たぶん咲希が可愛いからだろう。それに気づいていないであろう咲希。スマホを見ている。視線を感じてないのか気になる。ここでもまた、天然を発動しているのだろう。すごいと思う、逆に。
夜ご飯を食べて、家に帰ってきた。もう夜の9時を回って、俺は疲れたのもあって眠くて仕方ない。早く寝たい。まぁ、さっさと風呂でも入ろうとして脱衣所の扉を開けた時、先に風呂に入っていた咲希が風呂を出て体を拭いていた。そう、俺は見てしまった。何とは言わない。ただ見てしまった。
「ごめん。」
すぐ扉を閉めて、そういった。すると中から、
「大丈夫!」
と一言。何が大丈夫なのか全くわからない。いくら家族とはいえ今日話したばかりのほぼ他人。学校でも話したことのないほぼ他人。そんなやつに裸見られて大丈夫だと?そんな訳ない。本当に天然だな。いやこれは天然で留めていいのか?もはや何も考えてないのでは?
そして咲希が出てきた。俺はもう一回ごめんと言ったが、咲希はニコニコして大丈夫だという。もう咲希が大丈夫だというのだから大丈夫だと自分に言い聞かせて、風呂に入る。ダメだ。眠気が覚めた。もう寝てる場合じゃない。
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